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On the Production
by 井口健二
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■第61回
Beginning”で、ポール・シュレイダー版とレニー・ハーリ
ン版の2つのヴァージョンを、DVDで発売する計画が公表
された。
 この企画は、ワーナー傘下のモーガン・クリークが進めて
いたもので、ピーター・ベンチュリー原作脚本、ウィリアム
・フリードキン監督による1973年の大ヒット作で、巻頭部分
に描かれたマーリン神父と悪魔の最初の闘いを、本格的に1
本の作品として映画化するというもの。
 そしてこの映画化は、ウィリアム・ウィッシャー、カレブ
・カーが脚本を執筆、元々はジョン・フランケンハイマーの
監督だったが、監督が死去したために『タクシー・ドライバ
ー』などの脚本家で、『キャット・ピープル』の1982年リメ
イクの監督でも知られるシュレイダー監督が引き継ぎ、一昨
年の秋からローマのチネチッタスタジオを使って撮影が行わ
れた。しかも昨年の夏前にはその撮影も終了、当初は今年2
月の公開を目指してポストプロダクションが進められていた
のだが…。
 昨年の9月になって、監督とモーガン・クリーク側の創造
上の意見の相違が発覚。実はこの時、ポストプロダクション
もほぼ完了して、映画は完成していたと言うのだが、シュレ
イダーは監督を降板することになってしまった。
 この事態に、モーガン・クリーク側は、救援監督としてレ
ニー・ハーリンを招請、当初は6週間の予定で再撮影が開始
された。ところがシュレイダー版に出演した俳優の中に、再
撮影への参加を拒否するものが現れ、結局ハーリンは、ほぼ
全編を取り直すことになってしまった。
 そこでアレクセイ・ハウリーという脚本家が招かれ、脚本
の一部修正と、キャスティングの変更、さらに一部キャラク
ターの役名の変更が行われた。
 因に変更されたのは、シュレイダー(S)版でガブリエル
・マンが演じていたフランシス神父役は、ハーリン(H)版
ではジェームズ・ダーシーに配役変更。またS版でクララ・
ベラが演じたレイチェルという役は、H版では役名がサラに
変更されてイザベル・スコルピオが演じ、さらにS版でポッ
プ歌手のビリー・クロフォードが演じていたチェチェという
役は、H版ではジョセフとなってレミー・スウィニーが演じ
ているそうだ。
 そしてハーリン版は、製作費5200万ドルを掛けて完成し、
ワーナーから、今年8月20日に全米公開のスケジュールも発
表された。
 ということで、映画“Exorcist: The Beginning”は完成
されたのだが、ここで問題なのはシュレイダー版の扱いとい
うことになる。実はこの作品は、当初の話し合いでオリジナ
ルのようなどぎつい描写を排した、ショッキングホラーでは
ない作品として検討されたということで、製作費も3200万ド
ルで製作されている。そしてシュレイダー自身、「ハーリン
版も良くできていると思うが、自分の作品にも自信がある」
と発言しており、すでにモーガン・クリークが公式に試写を
行うことも認めている。
 そこで出てきたのが、DVDでの発売というアイデアで、
2つの版を同梱にするか別売にするかは未定だが、何しろシ
ュレイダー版も一般の目に触れる状態にするということだ。
 経緯から考えて、シュレイダー版はじっくり物語を描き、
ハーリン版は派手目にアクションで描いていると予想される
が、ファンサイドから見れば、2人の監督の演出の違いを楽
しめる訳で、滅多にない機会とも言える。日本でもハーリン
版の劇場公開は決っていると思うが、是非ともシュレイダー
版のDVD発売もお願いしたいものだ。
        *         *
 お次はシリーズからのスピンオフの計画で、昨年公開され
た『トータル・フィアーズ』に、ジャック・ライアンの助っ
人として登場したCIAエージェント=ジョン・クラークを
主人公にしたシリーズを、パラマウントの製作で映画化する
計画が正式に発表された。
 この計画については、2002年12月15日付第29回などでたび
たび報告してきたが、ジャック・ライアンシリーズと同じく

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04月15日(木)
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