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On the Production
by 井口健二
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■ゴッド・ディーバ、スイミング・プール、イン・ザ・カット、リアリズムの宿、スクール・オブ・ロック、卒業の朝、上海家族
井筒作品のように見慣れていると、笑い方も判ってくるが、
初めて見た監督でこれだけ笑えたのは大したものだ。日本人
のコメディセンスも、正統派の映画監督の手になると捨てた
ものではないと言う感じを持った。
本当にありそうで、でも本当はある訳が無くて、この感じは
ファンタシーに通じるところがある。そんな感覚でも楽しめ
る作品だった。
『スクール・オブ・ロック』“The School of Rock”
主演のジャック・ブラックが、今年のゴールデン・グローブ
賞のコメディ/ミュージカル部門の主演男優賞にノミネート
された作品。
実は、ちょっと太めの主人公がギターの極めポーズを取って
いるポスターには、多少退くところがあった。しかもブラッ
クは、アメリカではそこそこの人気はあるようだが、日本で
はまだ有名と言うほどではないから、これはかなりきつい。
しかし、本作でノミネートの実績は伊達ではなかった。
過激な演奏スタイルで、バンド仲間からも嫌われてしまった
主人公が、取り敢えず家賃を稼ぐために、友人の名をかたっ
て小学校の代用教員になる。しかもそこは、厳格なしつけで
評判の名門校。
最初は2週間をごまかし続ければ金は稼げると思い、授業態
度もいい加減だったのだが、ふと子供たちの音楽の才能に気
付いたことから、子供と一緒にバンド合戦に出ることを思い
つく。こうして、子供たちをロック・ミュージシャンにする
指導を始めるのだが…。
第一に資格もないのに教師をやっているし、それも学校には
隠れてロックを教えている。その上、子供たちにもバンド合
戦の意味については嘘をついている訳で、2重3重に嘘で固
まってしまっている。
それを乗り越えて行く話だから、下手に作ったら本当に嫌み
になってしまうところだが、それを見事にクリアしているの
だから大したものだ。
それに、子供たちの演奏がどこまで本物かは判らないが、見
ている限りは見事なものだったし、実際にかなり様になって
いる。こういう辺りも手を抜かないのが、ハリウッド映画の
底力と言うところだろう。
なお、僕が見た試写会は、音楽関係者が多く来場していたよ
うで、上映前はプレスシートの内容に文句を着けたり、あま
り芳しい状況でなかったのだが、それが映画が始まると、途
中で拍手は出るは、最後は「感情移入しちゃうよな」なんて
言う発言が出ていたから、かなり良い感じだったようだ。
『卒業の朝』“The Emperor's Club”
イーサン・ケイニン原作『宮殿泥棒』の映画化。
原作者は1960年生まれということで、1976年の名門高校が舞
台のこの作品は、彼自身が学生の時代を描いている。そして
主人公は、その名門校で歴史を教えるベテラン教師。そのク
ラスに、上院議員を父親に持つ転校生が入ってくる。
この転校生がかなりの悪餓鬼で、授業の妨害などもしょっち
ゅうだが、彼には同級生の心を掴むカリスマ性がある。そし
て、その生徒がある切っ掛けから、一旦は教師が信頼を寄せ
るまでの優等生になるのだが…。
物語は、その教師が引退し、一方、生徒は大企業家になり、
その元生徒が学生時代に優勝を果たせなかった学内のコンテ
ストに再挑戦したいと言い出すところから始まる。しかしそ
のコンテストには、教師も苦い思い出があった。
実に、いろいろなことを考えさせられる物語。原作者は現在
大学のライターズ・クラスで教鞭を取っているということだ
が、それを聞くとなるほど、テクニック的には巧い物語を作
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02月29日(日)
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