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On the Production
by 井口健二
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■幸せになるための・、エル・アラメイン、ニューオーリンズ・トライアル、25時、みんなのうた、グッバイレーニン、ニュータウン物語
2000年公開の『ドッグ・ショウ』が話題になったクリストフ
ァー・ゲストとユージーン・レヴィの共同脚本、主演、ゲス
ト監督によるフェイク・ドキュメンタリーのコメディ。
このジャンルでは、ロブ・ライナーの脚本監督で、ゲストが
主演と共同脚本にも名を連ねた1984年の作品『スパイナル・
タップ』が嚆矢と言われ、今ではmock documentary(略して
モキュメンタリー)という名前も付けられているそうだ。
という訳で、そのモキュメンタリーの旗手とも言えるゲスト
とその右腕レヴィの新作は、1960年代のアメリカフォークを
題材にしたもの。時制は現在で、その元締めとも言われたプ
ロモーターが亡くなり、その息子が父親の追悼コンサートを
開催しようとするお話だ。
登場するのは、男女9人組コーラスグループのメイン・スト
リート・シンガースと、男性3人組のザ・フォークスメン、
そして伝説の男女デュオのミッチ&ミッキー。彼らの思い出
話とフォークに対する思い入れ、そして現在の様子などが描
かれる。
この内、9人組のグループは代替わりして現在に引き継がれ
ているものの、あとの2組は数10年ぶりの再会となるという
設定だ。そこには解散までの経緯や、現在も仲間に寄せる思
いなど、悲喜交々のドラマが存在するのだ。
それそれのグループが、いろいろなフォークグループのパロ
ディになっているのはもちろんだが、その結成の経緯や解散
の理由などが如何にもありそうに語られる。また今も続くグ
ループの内情がかなり怪しげなのもありそうな話だ。
一応、70年安保当時の日本で、反戦フォークからその後の青
春フォークブームに変っていく頃に、それなりに関心を持っ
て見ていた者としては、日本もアメリカも同じような話があ
ったものだと改めて思わされた。
『ドッグ・ショウ』のときには、犬を飼っている者として成
程と思うところがある反面、多少どぎつい描写に退いてしま
ったところもあったが、今回は心底楽しめた感じだ。特にク
ライマックスなどは、フェイクと知りつつも目が潤んでしま
った。
といっても、ただでは済まないところがゲストとレヴィの凄
さだが。
それと、圧巻は中で歌われるフォークソングの数々。実に当
時の雰囲気を彷彿とさせる曲ばかりなのだが、これが全部フ
ェイクなのだ。エンディングロールによると出演者たちが自
分で作詞して歌っているようだが、歌唱演奏を含めていずれ
も見事なものだった。
また、作曲には、『オー・ブラザー!』のサウンドトラック
でマルチミリオンを達成したT・ボーン・バーネットが参加
しており、さすがという感じがした。
『グッバイ、レーニン』“Good Bye Lenin!”
すでに何本か紹介したドイツのXフィルムの2003年作品。
現代ドイツが抱える問題を鋭く描くXフィルムの今回の作品
は、1989年11月9日のベルリンの壁崩壊前後の人々の混乱を
描いている。
主人公の母親は、筋金入り社会主義者の小学校教師。しかし
1989年10月7日の東ドイツ建国40周年記念式典の日に心臓発
作で倒れて昏睡状態となる。そして8カ月後、奇跡的に回復
はするが、その間にドイツは統一され、社会主義の東ドイツ
は消滅してしまう。
その母親の病状について、医者は次のショックが来たら最後
だと告げる。母親にとって最大のショックとは、信じてきた
社会主義東ドイツの消滅。そう考えた主人公は、あらゆる手
段を使って母親に旧体制の存続を信じさせようとするが…。
ピクルスやジャムを東ドイツブランドの瓶に詰め替えたり、
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12月16日(火)
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