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On the Production
by 井口健二
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■第16回東京国際映画祭(前半)
語り、人類とはいったい何なのかを考えさせる。全体はコメ
ディだし、別段深遠なことを語ろうという意図はないのだろ
うが、語られる話は結構面白かった。          
ちょっとだけあるVFXもそれなりに決まっていた。   
                           
『さよなら、将軍』“¡Buen Viaje, Excelercia!”    
1975年に亡くなったスペイン・フランコ政権末期の内幕を描
いた作品。                      
すでに老人性痴呆症の兆候を見せているフランコを、その存
在だけで政権に留まらせようとする取り巻きたちの姿を皮肉
たっぷりに描き出している。              
実際に、その頃の圧政は民衆をかなり困らせたようだが、30
年近く経って、ようやくそれを見直すことができたというと
ころのようだ。                    
テクニック的には、当時のニュースフィルムにフェイクの画
像を繋ぎ合わせるなどの手法もかなり効果的に使われている
が、映画の最後で明かされる、一人2、3役ずつをこなした
俳優たちの演技も面白かった。             
当事者でない我々には、ピンと来ない部分も多いが、首相が
掲げた選挙の定年制でのドタバタを見せられたばかりのとこ
ろでは、なるほどと思わせるところも多々あった。    
それからこの作品でも、スペインリーグのトトカルチョに興
じるシーンが描かれており、そこはそれなりに理解できた。
                           
『心の羽根』“Des Plumes dans la tête”        
ちょっと目を離した隙に、5歳の息子を死なせてしまった母
親の心が癒されるまでの1年を描いた作品。       
正直に言って、見ていて途中まで不快に感じていた。それは
例えば子供の死が描かれているはずのシーンで、ことさら陽
気なコーラスが流れたり、不必要な感じのセックスシーンが
描かれている点だった。                
しかし途中で、その不快感が、多分、遺族の気持ちを追体験
しているものであることに気づいた。恐らくは当事者にとっ
て、周囲のこのような無神経さが一番こたえるものなのだろ
う。それに気づいてこの映画が理解できた気がした。   
母親は精神に異状をきたしかけて、無感覚になっているのだ
が、その気持ちも何となく理解できる感じがした。その辺を
考えると、かなり良くできた脚本ということなのだろう。 
なお、死んでしまう子供が、生前のシーンでずっとゴジラの
ソフビ人形を持っている。本映画祭を意識してのことかどう
かは判らないが、ちょっと気になった。         
                           
<特別上映作品>                   
『スカイハイ劇場版』(日本映画)           
連載マンガを原作に、テレビ朝日系列で放送されたシリーズ
の映画版。テレビシリーズは見ていないが、その結末から新
たな物語が構築されたようだ。             
監督は北村龍平。以前にこの監督の長編第1作を評価した割
りには、その後は短編を1本見ているだけだったが、本作を
見て自分の評価が間違っていなかったと再確認した。   
心臓だけを抜かれて殺されるという連続猟奇殺人事件が起こ
り、その事件を追う刑事の婚約者も結婚式の式場でその被害
者となる。そしてその復讐を誓う刑事だったが、そこには現
世と来世を繋ぐ怨みの門を巡る闘いが待ち受けていた。  
現世で恨みを残して死んだ人間が、恨みを忘れて来世に生き
るか、霊魂となって現世に留まるか、恨みを晴らして地獄に
堕ちるかを選択する怨みの門。この基本設定が、映画ではさ
らに拡大され、その設定が見事に活かされていた。    
テレビはホラー仕立てだったようだが、映画版はアクション
中心、特にチャンバラをたっぷり見せてくれる趣向になって

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11月05日(水)
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