ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■シービスケット、ニモ、ガーデン、すべては愛のために、ケイティ、戀之風景、気まぐれな唇、アンダーワールド、マトリックス
『トラフィック』の脚本でアカデミー賞を受賞したスティー
ヴン・ギャガンが、自らの脚本を初監督したスリラー作品。
名門大学で優秀な成績を収め卒業目前の主人公ケイティは、
2年前に突然失踪した恋人のことを思い続けている。彼は大
金持ちの遺産相続者であり、また舞台演出でも話題を呼んだ
カリスマ的な男だった。                
そんな彼女の許へ1人の刑事が失踪事件の再捜査のために訪
れる。そして彼女や学生たちの証言を集め始めるが・・・。
一方、ケイティは自分が誰かに監視されているような感覚に
襲われ、その恐怖心から刑事に接近して行く。      
現実と幻想が入り混じり、さらに現在と過去が交錯する巧み
なプロットで、1時間39分の上映時間は厭きさせなかった。
また、結末に至る展開にも無理はなく、話は納得できた。 
途中で発生する別の失踪事件の下りはちょっとやり過ぎかな
という感じもするが、全体はまとまっていたと思う。   
次回作に期待したい脚本家、監督と言うところだろう。  
                           
『戀之風景』“戀之風景”               
アジア・フィルム・フェスティバルに出品されるNHKと香
港の共同制作作品。                  
同フェスティバル出品作品の試写はこれで3本目になるが、
本篇はさすが香港映画だけのことはあって、今回見た作品の
中では一番まとまりが良かった。            
亡き恋人が書き残した風景画を頼りに、彼の故郷で風景画の
場所を探す女性。彼女は彼との思い出を記憶に留めるため、
時間経過も表わすある作業を続けているが、旅先で巡り会っ
た青年との間で心は揺れ動く。             
この展開だけで充分なメロドラマとなる訳で、あとはこれに
如何に印象的な展開を持ち込むかと言うところだ。その点で
も、この監督は最後に効果的な手法を用いて、上手くまとめ
上げている。                     
監督は『金魚のしずく』のキャロル・ライ。前作はもっと子
供の話だったと記憶しているが、今回は成年男女の機微を切
なく描いて、女性監督らしい作品という感じだった。   
なお、前週一般公開された香港の興行では、『キル・ビル』
を上回る成績を上げているそうだ。           
                           
『気まぐれな唇』(韓国映画)             
00年の東京国際映画祭で、審査員特別賞を受賞した『オー!
スジョン』のホン・サンス監督の02年の作品。この作品まで
3作連続でカンヌ映画祭「ある視点部門」に招待されたが、
この3作目は招待を断ったことでも話題になったそうだ。 
ちょっと自意識過剰気味の男性俳優が、先輩の恋人に言い寄
られたり、逆に自分を知っている女性に言い寄ろうとして、
すったもんだする姿を描いたヒューマンコメディ作品。  
映画は、主人公以外は舞台も登場人物も変る2部構成になっ
ているが、さらに細かい物語の切れ目ごとに小見出しのよう
な字幕が入ったり、「人間が生きていくことは苦しいが、獣
になってはいけない」という警句(?)が繰り返し使われた
り、前半で説明された伝説が最後の落ちになっていたりと、
なかなか面白い構成になっていた。           
撮影は、台本無しで行われ、監督からはストーリーだけが提
示されて、俳優はほとんど即興で演じたということだが、そ
こからこれだけの構成の物語を造り出すというのは見事な才
能だ。                        
また、即興ということは、台詞も生の声というか俳優が感じ
たままが話されている訳で、確かに聞いていて頷いてしまう
ところが多いのは、このやり方が成功だったということだろ
う。まあ、日本も韓国も男女の関係はそれほど変らないとい
うことだ。                      

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11月02日(日)
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