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On the Production
by 井口健二
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■ブルドッグ、ヴァンダの部屋、ストーリー・ビギンズ・アット・ジ・エンド、悪い男、アフガン・零年、ジョゼと虎と魚たち、キル・ビル
第5回NHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映され
る新作で、アフガニスタンのセディク・バルマク監督とNH
Kの共同製作作品。タリバン政権崩壊後、初めて撮影された
アフガニスタン映画で、今年のカンヌ映画祭で新人監督特別
賞を受賞している。
タリバン政権下のカブール。女性一人の外出が禁止され、男
性のいない一家は収入の術を失ってしまう。そこで窮余の策
として娘の髪を切り、少年として働かせるのだが、街の少年
は全員タリバンの学校に行くことを命じられる。そこで食糧
も配給されるが、やがて少女であることが発覚してしまう。
82分の作品で、物語は深くは描かれない。監督もそれを語り
切れるほどの技術は持っていないのかも知れない。しかし、
ここには真実の重みがある。恐らくは、タリバン政権下のカ
ブールで日常的に起こっていた出来事なのだろう。
強かに生きる女たち、無邪気だが残酷な子供たち。特に、兵
器で遊ぶ子供たちの姿が恐ろしかった。
『ジョゼと虎と魚たち』
田辺聖子原作の長編小説の初めての映画化。
大学生の主人公は、ある日、ジョゼと自称する足の不自由な
女性と出会う。彼女は、障害者であるとの僻みからか、粗暴
な行動や言葉づかいで人々を遠ざけるが、主人公は逆にそこ
に惹かれて行く。そして、一緒に暮らし始めた彼らの生活が
描かれる。
この作品の最大のポイントは、障害者を特別な目で見ていな
いことだろう。しかし主人公は彼女を特別な目で見てしまっ
ている。そんなずれが、観客に真の物語を語りかける。
恐らくは、原作の素晴らしさもあるのだろうが、それを真面
目に映画化した制作者たちにも敬意を表したい。
大学生を演じるのは妻夫木聡。今の時点では、多分この人が
ベストだろう。等身大だし、特に演技していると言うより自
然体の雰囲気が良い。
対するジョゼ役は池脇千鶴。感情表現を抑えた役柄だから、
演技力はそれほど要求されなかったかも知れないが、体当た
りで演じているところは良かった。また、池脇とお婆役の新
屋英子の柔らかな大阪弁も心地よかった。
同じ日に韓国映画の『悪い男』とこの作品を見たが、恐らく
正反対の二つの愛が、どちらも見事といえる作品だった。
『キル・ビル』“Kill Bill vol.1”
クェンティン・タランティーノ監督の6年ぶりの新作。
本当は5年ぶりの作品になるはずだったが、撮影開始直前に
主演のユマ・サーマンの妊娠が発覚したために、彼女の回復
を待って撮影公開を1年近く延期したという作品。
また、当初は1本の作品として計画撮影されていたが、編集
段階で短縮できなくなり、結局2部作で公開されることにな
ったもので、今回はその第1部。しかしこの第1部だけで1
時間53分の作品に仕上がっている。
映画の全体は、日本のヤクザ映画とマカロニウェスタンにオ
マージュを捧げたものということだが、今回はその前半の日
本映画篇ということにもなる。
物語は、凄腕の女殺し屋がボスに裏切られ、結婚式を襲われ
て出席者は皆殺しにされる。しかし主人公は奇跡的に一命を
取り留め、4年間の昏睡の後に回復、襲った4人とボスに復
讐するという筋立て。
そして襲った内の1人、ルーシー・リュー扮するオーレン・
イシイ(石井お廉?)は、今や東京裏社会の大ボスになって
おり、彼女を倒すために、まず沖縄で日本刀を作らせ、その
日本刀を携えて東京に乗り込んでくるというものだ。
日本映画へのオマージュと書いたが、トリビュートと言った
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10月16日(木)
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