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On the Production
by 井口健二
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■東京ゴッドファーザーズ、ロイヤル・セブンティーン、かげろう、チャーリーと14人のキッズ、1980、ピニェロ、リクルート
が、それぞれの話の掘り下げ方に物足りないところはあり、
ちょっと散漫な感じは残った。多分バランスを気にしすぎた
のだろうが…。
物語の語り手であるはずの男子が途中消えてしまったり、構
成的に疑問の点もあるが、まあ、初めての作品でこれだけ作
れれば合格だろう。取り敢えず、サーヴィス精神の旺盛なと
ころは買える。次回作ができたら、また見てみたいものだ。
『ピニェロ』“Pinero”
プエルトリコ出身の詩人・俳優・劇作家ミゲル・ピニェロの
生涯を描いた作品。なお原題のnの上には〜が付く。
ピニェロは子供の頃に親と共にアメリカに移住。しかし移民
の子の定番で、麻薬や犯罪に手を出し監獄との間を行き来す
る人生となる。ところがその監獄で彼は詩の才能を発揮、さ
らに監獄での経験に基づく戯曲“Short Eyes”は評判となり
オビー賞も受賞する。
この戯曲は映画化もされ、彼は一躍ニューヨーク在住のプエ
ルトリカン(ニューヨリカンと自称)の中心的存在となる。
そして『刑事コジャック』などにゲスト出演するようにもな
るのだが、若い頃からの酒と麻薬で肝臓病を悪化させ、88年
に40歳で死去する。
という彼の人生が、医者から余命6カ月を宣告された辺りを
中心に描かれるのだが、多分この映画の想定する観客はピニ
ェロを熟知しているというつもりなのだろう。話は前後の脈
絡がなく描かれるので、最初はちょっと面食らった。
しかし、元々詩人の話なのだし、これくらいの感性で描くの
が正解なのだろう。いろいろ朗読される詩のリズムも心地よ
く、ラテン系の音楽も楽しめて、1時間35分の上映時間もち
ょうど良い感じだった。
なお、ピニェロの母親役でリタ・モレノが出演。さすがに老
けたが、子供時代のピニェロとダンスをするシーンなどは良
かった。
また映画の製作を、『ショート・サーキット』に出演し、そ
の続編ではインド人まがいのロボット学者の役で主演したフ
ィッシャー・スティーヴンスが担当しており、途中の劇場の
シーンでは切符売りの役で顔も見せていた。
『リクルート』“The Recruit”
『13デイズ』のロジャー・ドナルドスンの監督で、アル・パ
チーノ、コリン・ファレルが共演したCIA内幕もの。
ファレルが扮するのは、コンピュータが専門でMITを優秀
な成績で卒業した前途有望な若者。しかし彼は、石油会社に
勤めていたはずの父親の突然の死に疑問を抱いていた。そん
な彼に、パチーノ扮するCIAのスパイ訓練官バークが接近
してくる。バークは彼にスパイになることを勧め、父親の死
の謎をほのめかす。
こうしてスパイになる決心をした主人公を待ち構えていたの
は、他人を信用することを忘れさせる過酷な訓練だった。し
かも、バークは訓練生の中に2重スパイがいることを告げ、
彼にその摘発のための捜査を命令する。それは愛する人も裏
切らなくてはならない非情な任務だった。
この2重スパイの狙っているのが、CIAが開発した電源ラ
インを通じて浸透するコンピュータウィルスで、その名前が
「アイス9」。実はこの名前がカート・ヴォネガットの『猫
のゆりかご』に準えて付けられ、その後も主人公が『スロー
ターハウス5』を読んでいたり、主人公の作る朝食が『チャ
ンピオンたちの朝食』だったりと、何かファンには嬉しいエ
ピソードが用意されていた。
お話は、途中でネタは割れるが、後半までかなりサスペンス
を盛り上げて面白い。結末はもっと衝撃的でも良かったと思
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10月03日(金)
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