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On the Production
by 井口健二
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■東京国際映画祭(前)
ろでスカウトしたということだが、撮影開始前に1カ月のト
レーニングを行ったということで、素人とは思えない見事な
演技だった。
物語自体も、素朴で、どこにでもありそうな話で、そんな自
然さが出演者たちの自然な演技と結びついて、何かノスタル
ジアを感じさせる。ちょっと前の大林のような感じの作品だ
った。
なおこの作品は、当初コンペティションに選ばれたが、先に
別の映画祭への出品が判明したため、映画祭規約により選外
となっている。
『ホテル・ハイビスカス』(日本)
京都出身で、琉球大学に進学したまま沖縄に居着いてしまっ
たという中江祐司監督の沖縄を舞台にした作品。
米軍キャンプの近くに建つ、客室一つの小さなホテル・ハイ
ビスカス。そこに暮らすのは、婆ちゃんと、かあちゃんと、
とおちゃんと、黒人の血を引く長男と、白人の血を引く長女
と、沖縄人の血を引く美恵子。
美恵子は、小学3年生だが、いつも男子を従えて遊んでいる
やんちゃな子。こんな美恵子の周囲で起こるいろいろな出来
事を連作短編のような形で描いた作品だ。
そしてこの美恵子を演じた子役が、何しろ元気が良くて見て
いて本当に楽しい。
物語は、この一家の唯一の客としてやまとんちゅの若者が現
れたところから始まるが、といってもこの若者は何する訳で
なく、つまりこの若者はやまとんちゅである我々観客の代表
というところだ。
そしていろいろ綴られるエピソードでは、長男の父親の米兵
が移動の途中でキャンプ地に来て長男に会いたいと伝えてき
たり、キャンプ地の中に住む猫食いと噂される女性の話、2
日間の出稼ぎに行ったとうちゃんを訪ねて行くときに美恵子
が精霊に会う話、お盆で幼くして死んだ叔母さんが帰ってく
る話などが語られる。
こんな沖縄の現実と素朴さが、三線(さんしん)の音に載せ
て素敵に描かれている。
しかし物語の前半では、射撃訓練であろう大砲や機関砲や、
ヘリやジェット機の音がバックに流れ続ける。これも沖縄の
現実だと言わんばかりに。そのメッセージは強烈だ。
『わが故郷の歌』(イラン)“Marooned in Iraq”
イラン・イラク国境のクルディスタン地方を舞台に、クルド
難民の姿を描いた作品。
主人公は、クルド人の元歌手の父親とやはりミュージシャン
の2人の息子。ある日、父親に昔しバンドのメムバーと共に
別れて行った妻から、救援の要請が来たとの話が伝わる。そ
してその要請の手紙の持ち主を探す内、親子は徐々に国境へ
と近づいて行く。
最初イランの砂漠で始まる物語は、空爆の音が途切れなく続
く山岳地帯に進み、ついには雪に閉ざされたイラク側の難民
キャンプへと至る。
その物語の途中では、イラン側の日干し煉瓦工場や村を上げ
ての結婚式などが描写され、ロードムーヴィ風に進むが、や
がて国境が近づくに連れ、両親の殺された子供だけの難民キ
ャンプや、虐殺された人々の集団墓地、男たちが皆殺しにさ
れ女だけになってしまった町など、想像を超えた世界が展開
する。
しかもそれぞれの場所の、子供たちや女性の人数の多さに驚
かされる。もしかするとこれらは、演技や演出ではない、現
実の風景なのかもしれない。
それでも、それらの場所に着く度に、親子3人の音楽が演奏
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10月31日(木)
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