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On the Production
by 井口健二
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■潜行一千里 ILHA FORMOSA、無明の橋、少女はアンデスの星を見た、もしも脳梗塞になったなら、安楽死特区、もういちどみつめる
まれで本作のオーディションで選ばれ、長編映画は初出演の
陣野小和。他に2018年5月13日付題名紹介『菊とギロチン』
などの木竜麻生。
さらに室井滋、吉岡睦雄、岩瀬亮、山口詩史、岩谷健司らが
脇を固めている。
ザ・女性映画と言う感じの作品だが、その主人公を渡辺真起
子が手堅く演じている。渡辺は日本のインディペンデンス映
画界では正に至宝という感じで、この人が出ていれば外れは
ないという安心感も湧く女優だ。
そんな本作は布橋灌頂会という聞き馴れない祭礼が背景とな
るが、この祭りは江戸時代に始まったものの明治期には一時
廃れていたそうだ。しかし平成8年から現代的な祭礼として
甦ったそうで、正に女性の祭りが繰り広げられる。
しかもそれが現世と彼岸の間で行われるというのは、現代人
には魅力的とも言えそうだ。そんな背景が見事に生かされた
作品とも言える。なお脚本は坂本監督と同じく富山県で撮影
された2024年『祝日』などの伊吹一の共同によるものだ。
ザ・女性映画と書いたが、男性の胸にも響く作品になってい
る。
公開は11月28日から富山県で先行上映の後、東京は12月19日
より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座他にて全国順次ロード
ショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ラビットハウスの招待で試写を
観て投稿するものです。

『少女はアンデスの星を見た』“Yana-Wara”
2022年6月紹介『アンデス、ふたりぼっち』のオスカル・カ
タコラ監督がその記事でも書いたように急逝した後を、前作
のプロデューサーで監督の叔父にあたるティト・カタコラが
引き継いで完成させた作品。
映画の開幕はアンデスの高地とされる貧しい村落の集合体に
よる会議の席で1人の老人が裁かれる様子から。その老人は
孫娘殺害の罪に問われている。しかしなぜ老人は最愛だった
孫を殺すことになったのか?
ここから物語は時間を遡り、孫娘の誕生から13歳で老人に殺
されるまでの短い生涯が描かれる。それは誕生の時から「男
の子だったら」という発言に象徴されるものだ。そして少女
は失語症となり、性的暴力にも曝される。
時代背景は1980年、90年代とされるが、物語は実話に基づい
ているともされ、20世紀の末期でも南米のペルーはこんなだ
ったのだろう。そんな厳しい現実が前作と同様の厳しい自然
の中で描かれて行く。
中には呪術的な描写もあるが、全体はリアルな展開で描かれ
た作品だ。それが余計に恐ろしい。
出演はルス・ディアナ・ママミとセシリオ・キスペ。孫娘役
のママミは撮影の現地でスカウトされ、祖父役のキスペも監
督の友人からの紹介ということで、何れも演技経験はない。
その他の出演者も同様のようだ。
監督の前作も多分そんな感じだったと思うが、台詞の硬さな
どが却って物語の素朴さを表しているようにも感じられ、こ
の素材にこの演出方法は理解できるものだ。まあこの話で流
暢な演技をされても違和感だっただろう。
ただし映画の結末はかなり唐突にも感じてしまうものだった
が、このような男尊女卑の風潮は20世紀後半のペルーでは当
然だったもので、その点はしっかりと感じ取らなくてはいけ
ないようだ。犯罪者が追及されないのもその流れだ。
勿論モヤモヤ感は残るが、これが現実の世界ということだ。
そしてそれは多かれ少なかれ現代の世界中でも続いている流
れと言え、そんなことが訴えられている作品のようにも感じ
られた。そんなことも含めて名作と呼べる作品だ。
公開は12月20日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ブエナワイカの招待で試写を観
て投稿するものです。

『もしも脳梗塞になったなら』
2018年4月22日付題名紹介『明日にかける橋』などの太田隆
文監督が、自らの体験に基づいて描いた不慮の病への対処法
マニュアル映画。
主人公は映画監督。低予算作品が主体らしく、監督は脚本、
製作、編集など7役をこなして寸暇も惜しむ状況だ。でもそ
れで浮いた資金を制作につぎ込むなど、映画制作ファースト

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10月26日(日)
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