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On the Production
by 井口健二
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■壁の外側と内側、愚か者の身分
そんな社会の底辺に蠢く彼らだったが、何時かはその境遇を
抜け出し、真っ当に生きることも夢見ていた。それは社会の
闇を見続けての結論でもあった。しかしそんな彼らに試練の
時が訪れる。
出演はNHK連続テレビ小説『あんぱん』などの北村匠海、
同じく『虎に翼』などの林裕太、それに綾野剛。さらに山下
美月、矢本悠馬、木南晴夏。他に松浦祐也、加治将樹、田邊
和也、嶺豪一らが脇を固めている。
映画は、3人の登場人物それぞれの名前の振られた3つのパ
ートで進行し、特に前半の2パートは視点を変えることでか
なりの緊張感のある展開に仕上げられている。それは映画の
醍醐味とも言えるものだ。
それが第3のパートでは、映像的にはかなり強烈なものなの
だが演出は少しテンポも緩めて、コメディではないけど多少
戯画化した感じになっている。この緩急がこの作品では見事
に嵌っている感じがした。
内容的には闇バイトという現代を象徴するような悪事の深刻
な現実を描いているもので、その手口などはリアルで恐怖心
すら覚えるもの。その現実味のある恐怖を映画の前半では見
事に観客に突き付けてくる。
しかしそれを後半ではある種の戯画化することで、前半の恐
怖心をさらに倍加する効果にもなり、全体として物語に潜む
悪徳を鮮明に炙り出している感じもした。それは見事でこれ
を作り出した脚本家と監督には拍手を贈るものだ。
これこそが社会派エンターテインメントと呼べる作品だ。
公開は10月24日より全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社 THE SEVEN、ショウゲートの招
待で試写を観て投稿するものです。

07月13日(日)
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