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On the Production
by 井口健二
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■DROP/ドロップ、タンゴの後で、マルティネス、また逢いましょう、ミッシェル・ルグラン−世界を変えた映画音楽家
こうして完成された作品は予想以上の評判を呼び、マリアは
一躍時代の寵児となって行くが、彼女自身は撮影時のトラウ
マに悩まされ続けていた。そんな中で彼女はある若い女性と
出会う。そして撮影時の出来事を訴え始める。
しかし彼女の声はなかなか世間には届かなかった。
脚本と監督はベルトルッチの許でインターンをしたこともあ
るというジェシカ・パルー。監督に対しての想いもあるとい
う女性監督が、マリアの従姉妹ヴァネッサ・シュナイダーが
発表した原作と出会ったことから誕生した作品だ。
出演は2021年の主演作でリュミエール賞を受賞したというア
ナマリア・ヴァルトロメイ。相手役にジョゼッペ・マッジョ
とマット・ディロン。他にセレスト・ブランケル、イヴァン
・アタル、マリー・ジランらが脇を固めている。
男性にとってかなり手厳しい作品であることは間違いない。
しかも元の作品の公開当時を知る者としては、こんなことが
あったのかという思いもするが、正直に当時を思い出すとか
なり複雑な思いにもなる。
しかも彼女の主張が認められなかったという現実は忸怩たる
思いにもなる。そんな弱かった女性の立場を改めて描くこと
が歴史を見据える意味でも大切な作品と言える。まあ昨今は
こんなにも無視されることはなくなったと思いたいが。
ここから未来に向かっての警鐘とも言える作品だ。
公開は9月5日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷シャン
テ他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社トランスフォーマーの招待で試
写を観て投稿するものです。

『マルティネス』“Martínez”
本作で長編デビューの女性監督が描く、異国の町で老境を迎
えることになった男性が、ふとした切っ掛けで人生を見つめ
直すことになるヒューマン・ラヴストーリー。
主人公はチリからメキシコにやってきて事務職で勤務する男
性。一人住まいのアパートでは階下から四六時中響くテレビ
の音に悩まされ、勤務先では引退を促されて後任らしい男も
入ってくる。
そんな彼の住むアパートで、階下の女性がテレビをつけたま
まの孤独死で発見される。そして遺品を整理していた大家か
ら、彼宛てに残されていたプレゼントの包みを手渡された主
人公は…。
脚本と監督は、1978年グアダラハラ生まれで地元の大学で映
像を学んだ後に奨学生でニューヨークの大学で学び、さらに
バルセロナの大学に留学するなど、15年間に5カ国で暮らし
たというロレーナ・パディージャ。
すでに短編作品で受賞歴などもある才媛が母国で発表した長
編デビュー作だ。
出演は2017年製作でアカデミー賞® 国際映画賞を受賞したチ
リ映画『ナチュラルウーマン』に主演のフランシスコ・レジ
ェス。他にウンベルト・ブスト、マルタ・クラウディア、メ
リー・マンソ、マリア・ルイーサらが脇を固めている。
因に元の脚本では主人公はメキシコ人だったが、主演が決ま
らない中でレジェスの演技を見てオファーしたとのこと。そ
のためにキャラクターも変化したが、異国で暮らす主人公の
孤独感には監督自身の体験も反映されているのかな
一方、俳優は主人公のモデルが監督の父親だと聞いて即決し
たそうだ。そんな思惑のコラボレーションが見事に作品に昇
華している。まあ主人公の変化の切っ掛けの部分には少し悩
むところはあったが…。
いずれにしても主人公に限らず現代人の抱える孤独感みたい
なものが、見事に表現されている作品だ。そしてそこに未来
への希望みたいなものが見えてくるのも素晴らしい。いろい
ろな小道具も素敵な作品だった。
自分も老境を迎えた身としては、何かを始めようという勇気
も貰える作品だ。
公開は8月22日より、東京地区は新宿シネマカリテ、ヒュー
マントラストシネマ有楽町、UPLINK吉祥寺他にて全国順次ロ
ードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社カルチュアルライフの招待で試
写を観て投稿するものです。

『また逢いましょう』
2019年2月24日付題名紹介『嵐電』でプロデューサーを務め

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06月22日(日)
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