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On the Production
by 井口健二
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■こんな事があった、わたしは異邦人、原爆スパイ
が、新鮮な物語を鑑賞するにはそれも有り難い。
因に脚本・監督のユルドゥムは女流で、脚本家・プロデュー
サーとしても活躍。過去には短編を複数本発表しており、本
作が長編デビューとなっている。
幽霊が見える設定というと『シックス・センス』などが思い
浮かぶが、そこからこのような進化が行われたという感じの
作品でもある。しかもそこにいろいろ現代的な視点が加わっ
ているのも見どころになっている。
そこには家父長制度のようなトルコ=イスラム国に特徴的な
ものも含まれるが、全体的には女性の立場の弱さのような普
遍的な部分もあって、日本人にも理解はしやすいものに表現
されている。
そしてもう一つの見どころは異国情緒あふれるシデの風景。
そこには古代遺跡を含めて邦題の「異邦人」も納得の見知ら
ぬ風景が登場する。しかも僕はこのシデを含むアンタルヤと
いう地名に聞き覚えがあって気になってしまった。
それで頭を捻って調べたら、その地は自分が応援しているJ
リーグのチームがCOVID-19禍以前に3度ほどキャンプを張っ
ていた場所だった。個人的にはそんなことでの親しみも湧い
て楽しめる作品だった。
公開は8月23日より、東京地区は渋谷ユーロスペース他にて
全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社パンドラの招待で試写を観て投
稿するものです。
『原爆スパイ』“A Compassionate Spy”
1997年にソ連のスパイと認定されるも生涯訴追されることの
なかった物理学者セオドア・ホールの姿を、1994年『フープ
・ドリームス』などのスティーヴ・ジェームズ監督が再現ド
ラマも交えて描いたドキュメンタリー。
セオドア“テッド”ホールは1925年のニューヨーク生まれ、
14歳でクイーンズカレッジに入学。1942年にハーバード大学
に編入して18歳で物理学の学位を取得。その前年からロスア
ラモスに最年少科学者として勤務を始めていた。
しかし開発された核兵器の威力にその技術を一国が独占する
ことの危険に気付いたホールは、1944年に休暇でニューヨー
クを訪れた際にソ連の情報部と接触、以後その研究の成果を
ソ連側に流すことになる。
そんなホールは、終戦後の1946年ににシカゴ大学に再入学。
そこで1944年に15歳でシカゴ大学に飛び級入学していた後の
妻ジョーンと出会う。そしてホールがジョーンにプロポーズ
と共に告げたのは、ソ連への情報提供の告白だった。
その後は1953年に同じくソ連のスパイとされたローゼンバー
グ夫妻の死刑執行を機にイギリスに移住。ケンブリッジ大学
に研究者として勤務して1999年に死去。その前にスパイと認
定されるも裁判には至らなかった。
そんなテッドとジョーンのホール夫妻の姿が、テッド本人の
アーカイヴ映像やジョーンへのインタヴューと再現ドラマ。
さらに家族や関係者へのインタヴューと共に描かれる。
なおこの作品はヴェネツィア国際映画祭、アムステルダム国
際ドキュメンタリー映画祭などで公式上映されている。
アメリカは核兵器を戦争で使用した唯一の国であり、日本は
唯一の被爆国とされる。しかし終戦の直前ですでに日本に戦
意の無いことが判明しているにも拘らずなぜアメリカは原爆
を投下したのか。そこがテッドの最大の危惧だった。
そのためテッドはソ連に情報を流したのであり、アメリカだ
けが強大化することへの危険を察知していたものだ。因に原
題の‘Compassionate ’は「慈悲深い」という意味。それが
この作品の主張だろう。
今や原爆がアメリカ、ロシアの2国というより、2人の大統
領の玩具とされている時代に、この作品は最大の警鐘として
公開されるものだ。
公開は8月1日より広島市八丁座にて先行上映の後、東京地
区は8月2日から渋谷ユーロスペース他にて全国順次ロード
ショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社パンドラの招待で試写を観て投
稿するものです。
06月15日(日)
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