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On the Production
by 井口健二
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■室町無頼、映画を愛する君へ、おんどりの鳴く前に、嗤う蟲、愛を耕すひと
的な作品も登場。
その一方で1988年『ダイ・ハード』や1993年『クリフ・ハン
ガー』など、普通の映画史では出てこないような作品も散見
される。正に監督自身が愛した映画たちが並べられているよ
うだ。
もちろんその中には、2022年4月紹介『映画はアリスから始
まった』のアリス・ギイやアルフレッド・ヒッチコック、イ
ングマール・ベルイマンなど歴史を語るに相応しい作品もあ
るが、僕には意味不明の作品もあった感じだ。
結局の話、これらの作品は監督自身の映画体験を綴っている
もので、それに共感できれば評価も容易いが、映画の楽しみ
方は各自異なるもので、僕個人的には何か押し付けられてい
るような感じも持ってしまった。
ただ映画体験の浅い人にはこれも映画の見方を知る上で価値
があるかな。そんな一つの見方を教えてくれる作品にはなっ
ているのだろう。とは言うものの最後に『SHOAH ショア』の
話が延々と出てくるのにはまいったが。
公開は2025年1月31日より、東京地区は新宿シネマカリテ、
ヒューマントラストシネマ渋谷、UPLINK吉祥寺他にて全国順
次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社アンプラグドの招待で試写を観
て投稿するものです。

『おんどりの鳴く前に』“Oameni de treabă”
ルーマニア・モルドヴァ地方の寒村を舞台にしたブラック・
コメディ。ルーマニアとブルガリアの合作で、ルーマニアの
アカデミー賞では6冠に輝いたという作品。
主人公は都会の勤務も経験した警官。その主人公が出身地の
村で果樹園の経営を夢見、街に所有していたアパートを引き
払ってその資金に充てることを考える。そんな主人公には村
での勤務で、若い見習い警官の部下もいたが…。
その村は人格者の村長の許で過疎化の進む地方の中でも人口
が減らないとされており、地方社会の模範ともされていた。
ところがそんな村で事件が起きる。その捜査を見習い警官が
進めようとするが、主人公はそれを諫め続ける。
その裏には村の歴史に基づく因習があったが、さらにそこに
は主人公も知らない村の秘密があった。
出演はルーマニア・アカデミー賞で主演男優賞受賞のユリア
ン・ポステルニク、同助演男優賞受賞のヴァシレ・ムラル。
他にアンゲル・ダミアン、ダニエル・ブスイオク、クリナ・
セムチウク、ヴィエタリエ・ビキルらが脇を固めている。
監督は同監督賞受賞のパウル・ネゴエスク。1984年生まれの
監督は2016年には自身の長編第2作で同年のルーマニア興行
記録第1位にも輝いているそうだ。なお本作は他に脚本賞、
編集賞、作品賞にも輝いている
映画の宣伝チラシにはタランティーノの名前が挙がっている
が、僕は1996年『ファーゴ』のコーエン兄弟の思い出してい
たかな。1996年の作品も警官が主人公で、田舎が舞台だし、
雰囲気も似ている感じがした。
コーエン兄弟では弟イーサンの『ドライブアウェイ・ドール
ズ』を2024年3月に紹介しているが、どの作品も社会の規範
をちょっと外れてしまった人たちの姿を温かい目で見ながら
描いている。本作にもそんな目線が感じられた。
いろいろな社会の柵に巻き付かれながら、それでも懸命に生
きている。そんな姿が愚かしくも優しく描かれた作品だ。そ
して結末は、これはかなりぶっ飛んだ感じの展開だが、これ
はこれで納得のできる巧みな作品でもあった。
公開は2025年1月24日より、東京地区は新宿シネマカリテ、
ヒューマントラストシネマ有楽町、UPLINK吉祥寺、さらに京
都シネマ他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社カルチュアルライフの招待で試
写を観て投稿するものです。

『嗤う蟲』
2012年3月紹介『先生を流産させる会』や2024年3月紹介
『毒娘』など内藤瑛亮の脚本を、2022年5月紹介『ビリー
バーズ』や2022年11月紹介『恋のいばら』などの城定秀夫
監督で映画化した作品。
舞台は日本のどこかの田舎。麻宮村というその田舎にスロー
ライフに憧れた若い夫婦が引っ越してくる。妻はイラストレ

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12月08日(日)
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