ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459565hit]
■十一人の賊軍、大きな玉ねぎの下で、ニッツ・アイランド−非人間のレポートー
日課長、和田正人。そして江口洋介、飯島直子、西田尚美、
原田泰造らが脇を固めている。
映画化は2002年「文藝賞」受賞でデビューした中村航が原案
ストーリーを執筆。そこから2024年1月紹介『彼女はなぜ、
猿を逃がしたか?』などの高橋泉が脚色し、2018年5月紹介
『世界でいちばん長い写真』などの草野翔吾が監督した。
物語の展開はほぼ楽曲の内容に則しているのだが、ここで問
題は昭和末期の文通の状況をいかに21世紀に合わせるかとい
うこと。この点で映画は実に巧みにその状況を作り出し、さ
らにそこから派生する問題も見事にクリアしていた。
因に原作ストーリーを書いた中村航は芝浦工業大学工学部卒
だそうで、元々技術畑の人間が構築したストーリーは理詰め
というか技術的に端々まで納得できるように構築され、これ
はもうある種のSFと呼べる作品になっていた。
そしてそれを脚色し監督したのが上記の2人だから、こちら
も科学的に裏付けされた内容をしっかりと映画化できるスタ
ッフが集まったと言えそうだ。タイムマシンもタイムスリッ
プもしないけれど、これは時間テーマのSF映画だ。
因に男女が出遭う武道館コンサートの顛末も史実通りの出来
事だ。ただ一点、チケットぴあの発券店が藤沢南口というの
は湘南出身者の自分としては少し違和感かな。三浦からなら
もっと行き易い店があったと思うのだが。
公開は2025年2月7日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東映の招待で試写を観て投稿す
るものです。
『ニッツ・アイランド−非人間のレポートー』
“Knit's Island”
メタバースに滞在する人々を、監督らが自らアバターとなり
メタバース内でインタヴューするというドキュメンタリー。
舞台となるのは〈DayZ〉と呼ばれるサヴァイヴァルゲームが
繰り広げられているネット上の島。そこには「ゾンビ」が徘
徊しており、アバターはその「ゾンビ」と闘いながら隠され
た食料などを発見して生き延びる…というものだそうだ。
そしてその世界ではアバター同士で音声によるチャットが可
能となっており、そんな世界に監督らはインタヴュアー、技
師、カメラマンとなって潜入、「撮影」を開始する。そこに
はゲームをするだけでない様々な「生き方」が存在した。
監督は、いずれもフランスのモンペリエ美術学校で2017年に
造形表現の修士号を取得したエキエム・バルビエ、ギレム・
コース、カンタン・レルグアルク。すでに同旨の短編作品も
発表している3人が本格的な長編に挑んだものだ。
実在のPCゲームが題材でその映像も登場する作品としては
2023年12月紹介『PLAY!』などもあったが、実際にその世界
に入ってのドキュメンタリーというのは確かに新機軸と言え
るのだろう。
そしてそこでは現実世界とは異なる考え方や倫理観なども登
場し、人間の二面性みたいなものも垣間見られる作品になっ
ている。確かに殺人や窃盗なども許される世界での発言なの
だから、現実とは違うものになるのは当然だが…。
ただ、作品がヴァーチャル環境に拘り過ぎたのかその世界の
設定などが判り難いのは気になったところ。「ゾンビ」との
闘いが主眼らしいが、突然空中浮遊したり、その辺のゲーム
の設定を明瞭にして欲しかった。
それが判らないと実際の戦場でのドキュメンタリーと変わら
ない訳で、逆に宗教が絡むあたりは『地獄の黙示録』を観て
いるのかと思ってしまったくらいのものだ。新機軸ではある
がゲームやメタバースの特性を生かし切ったか…?
いずれにしても新たなドキュメンタリーの舞台は開かれた訳
で、ここから新しい作品が生まれてくることも期待したいも
のだ。人間は新たな環境で如何に変貌するか、そんなことも
テーマになりそうだ。
公開は11月30日より、東京地区は渋谷シアター・イメージフ
ォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社パンドラの招待で試写を観て投
稿するものです。
10月06日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る