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On the Production
by 井口健二
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■カオルの葬式、ホワイトバードはじまりのワンダー、雨の中の慾情
ている。
監督は、ドイツ生まれでスイス育ち、ニューヨーク大学映画
学科卒という2013年7月紹介『ワールド・ウォーZ』などの
マーク・フォースターが担当した。
物語は原作の通りなのだろうけど、子供どうしの苛めとナチ
スが行った国家犯罪とを一緒にすることには釈然としないも
のを感じる。さらに被害者であるユダヤ人の国家が現在中東
で行っていることを重ねると、この映画自体が否定されてい
るような感覚にも陥ったものだ。
正直に言って今回この記事を書くのにはかなり逡巡したが、
逆に今この時点でこれを発言しておく必要があると感じたの
で執筆を決めた。それにしても最近このような作品が多いの
も気になるところだ。
これが抑止にならず、後押しになっているのだとすれば恐ろ
しいことだが、映画の主旨が抑止であることは間違いない。
ただそれでも曲解して後押しと考えてしまう連中がいること
も事実と言える。
そんな連中が世界情勢を動かしているのだ。恐ろしい時代に
なったものだ。
公開は12月6日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を
観て投稿するものです。
『雨の中の慾情』
2004年2月紹介『リアリズムの宿』などのつげ義春の原作か
ら、同作を映画化した山下敦弘監督や韓国ポン・ジュノ監督
の許で研鑽した片山慎三監督が脚本・映画化した作品。
映画のタイトルにもなっている原作は、1981年に絵コンテの
まま発表されたというものだが、2024年にはヨーロッパ最大
の漫画祭において歴史に残すべき作品としての表彰の候補に
も挙がったものだそうだ。
そんな原作は短編で、その全貌が本作ではプロローグとして
映像化されている。そしてそこから同時期に発表されたつげ
の原作に基づく現実とも夢ともつかないシュルレアリスムの
物語が見事に展開されて行く。
そんな物語の骨子は、富裕層の住む北町と庶民が住む南町に
分割された社会が背景。そこで主人公は南町のアパートで漫
画の執筆に明け暮れているが、時折、大家の命令で友人の作
家と共に雑用に駆り出されてもいる。
そしてその過程では男女の出会いや別れ、そして友人の意外
な行動など、様々なエピソードが綴られて行く。そしてその
背景には重い現実も潜んでいる。そんな物語が多重構造の中
で巧みに描かれた作品だ。
出演は、2019年2月24日付題名紹介『さよならくちびる』な
どの成田凌と2014年1月紹介『愛の渦』などの中村映里子。
それに2023年8月紹介『白鍵と黒鍵の間に』などの森田剛。
さらに足立智充、中西柚貴、松浦祐也、梁秩誠、李沐aA伊
島空。そして台湾で多くの作品に出演の李杏。1991年につげ
原作『無能の人』を監督した竹中直人らが脇を固めている。
第2次大戦後の闇市時代を思わせる街中のシーンは台湾で撮
影されたものだそうだが、その雰囲気には圧倒された。しか
もそれに付随する豪邸のシーンなど、台湾での撮影にはかな
りのアドバンテージがありそうだ。
まあ正直に言ってかなり複雑な展開の物語で、それらを説明
しようとするとネタバレにも繋がってしまうものだが。映画
の全体としては適度のスケール感などもバランスが良く、気
持ち良く観られる作品だった。
面白くて考えさせられ、これぞ映画という感じの作品でもあ
る。
公開は11月29日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社カルチュア・パブリッシャーズ
の招待で試写を観て投稿するものです。
09月29日(日)
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