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On the Production
by 井口健二
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■雨降ってジ・エンド、フィリピンパブ嬢の社会学、コヴェナント約束の救出
正、勝野洋、田中美里、仁科貴、津田寛治、2019年12月22日
付題名紹介『東京不穏詩』などの飯島珠奈らが脇を固めてい
る。
正直に言ってフィリピンパブの実態などは良く知らなかった
が、以前はタレントヴィザなどで比較的容易に入国できたも
のが近年は厳しくなったのだそうだ。そこで偽装結婚という
手段が登場し、そこには裏社会の暗躍があるという。
そんな訳で彼女たちには相当な搾取があると考えられるが、
それでも母国への仕送りで大家族の生活が賄え、比較的大き
な家も持てるというのだから、これをもっと健全に行えるよ
うにするのが日本という国家の責任のようにも感じる。
タイトルに「社会学」とあるのは、そういう意味にも捉えら
れると思ったものだ。とは言うものの、映画化がどこまで実
話に則しているかは知らないが、一大学院生が良くここまで
やったとも思える作品だった。
なお映画はコメディタッチで描かれており、気楽に楽しむこ
とができる。そこに前田航基のキャラクターが良くマッチし
ているとも言える作品だ。
春日井市市制80周年と銘打たれた作品で、公開は2023年11月
から愛知県内各地で先行上映の後、東京では2024年2月17日
より新宿K's cinema他にて全国ロードショウとなる。
『コヴェナント約束の救出』
“Guy Ritchie's the Covenant”
2023年8月紹介『オペレーション・フォーチュン』などのガ
イ・リッチー監督が初めて戦争映画に挑戦し、アフガニスタ
ンで現在も続いている状況を描いた作品。
物語の背景は2018年3月、アフガン駐留の米国軍はタリバン
の武器や爆発物の隠し場所の捜索に明け暮れていた。そんな
中で主人公の小隊は爆弾テロで通訳を失い、その後任にやっ
てきたのは他隊で問題があるとされた男だった。
しかし主人公はその男を採用し、男は期待以上の実力を発揮
する。こうして主人公の信頼を得た通訳だったが、武器庫の
掃討に向かった小隊がタリバンの反撃を受け、主人公と通訳
以外が殲滅されてしまう。
このため2人は基地までの遠路をタリバンの追跡を受けなが
ら潜行することになるが…。主人公は途中で瀕死の重傷を負
い、そんな主人公を通訳の男はあらゆる手段を駆使して基地
まで連れ戻した。
その後の主人公は傷も癒えて家族の許に帰国するが、実は通
訳の家族には約束されていた米国ヴィザが発給されず、タリ
バンの標的となって行方が判らなくなっていた。この事態に
主人公は国家の支援なしに救出に向かう。
出演は、2019年4月21日付題名紹介『ゴールデン・リバー』
などのジェイク・ギレンホールと、イラク出身でデンマーク
で活動する2016年9月紹介『ある戦争』などに出演のダール
・サリム。
他にエミリー・ビーチャム、ジョニー・リー・ミラー、アレ
クサンダー・ルドウィグ、アントニー・スター、ボビー・ス
コフィールドらが脇を固めている。
映画の最後には2021年に米国軍が撤退し、タリバンの支配と
なったアフガンでは多くの元通訳が処刑され、さらに多くの
通訳とその家族が逃亡生活を強いられているとのテロップが
掲示される。
実際にリッチー監督はその状況を伝えるBBCのドキュメン
タリーから本作の企画を立ち上げたとも伝えられており、現
況はかなり厳しいようだ。そんなメッセージ性も強く謳われ
た作品になっている。
それにしても本作全編に漂う緊張感は只ならぬもので、実際
に 123分の上映中は息継ぎもままならない感じがした。正に
ここが戦場でその現場にいるという感覚にもなった。見事な
演出の作品だ。
上記の『ある戦争』の紹介記事でも書いたが、反戦を謳って
戦闘を描く作品を僕は信用していない。しかし本作は反戦を
謳っているのではなく、戦争がもたらす様々な愚かしい事象
を描いているもので、そこを高く評価するものだ。
公開は2024年2月22日より、全国ロードショウとなる。
* *
なおこの週はもう1本試写を観ましたが、映画評の解禁が
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12月17日(日)
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