ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459563hit]
■二十歳に還りたい。、さよならほやマン、北極百貨店のコンシェルジュさん、鯨の骨、カンダハル−突破せよ−
として出演の黒崎煌代。他に津田寛治、松金よね子らが脇を
固めている。
主演のアフロは本格的な演技は初めてのようだが、監督が執
筆した脚本が当て書きだったらしく、正にらしくこの役を演
じている。因にアフロは出演のために小型船舶の免許も取得
し、ロープの結び方もしっかりと学んだそうだ。
物語は3・11を背景にしたものだが、それ以上に行き詰りを
感じる現代の若者に届く話だろう。目標を定めにくい時代、
自分が何をすれば判らない若者たちにそのヒントを与えてく
れるかもしれない作品だ。
最初は単純なご当地ものかなと思いながら観始めたが、予想
以上に奥が深く単なる復興ものでもない感動を与えられた。
主演の3人のバランスも良いし、ユーモアの描き方も適切に
感じられた。ベストな作品と言えるだろう。
それにしても劇中の新鮮なホヤの美味しそうなこと。東京だ
となかなかお目に掛れないし、あっても生臭さが先に立って
しまうが、現地で食べると本当に美味しいのだろうな、そん
な羨望も感じてしまう作品だった。
公開は11月3日より、東京地区は新宿ピカデリー他にて全国
ロードショウとなる。
『北極百貨店のコンシェルジュさん』
2015年公開『百日紅Miss HOKUSAI』でキャラクターデザイン
を務めた板津匡覧監督が、文化庁メディア芸術祭マンガ部門
で優秀賞を受賞した西村ツチカの原作をアニメーション映画
化した長編デビュー作。
従業員は人間だが、顧客は動物たちという「北極百貨店」。
その店でコンシェルジュとして働き始めた主人公は、先輩や
厳格な主任が見守る中で、様々な要求をしてくる顧客たちを
相手にその願いを叶えるべく奮闘する。
この作品も物語の展開は予想外だったかな。特にすでに絶滅
してしまった動物の扱いが、何というかすごく素敵に感じら
れる作品だった。しかもその描き方が理に適っているという
か納得できる。
これは原作がそういう作品なのだろうけど、主人公に与えら
れる問題とその解決策が、それに関連するギャグも含めてほ
のぼのというか、実に心が温まる展開なのだ。その描き方も
気に入ってしまった。
因に劇中での絶滅種はV.I.A(Very Important Animal)と呼ば
れているが、登場するのはワライフクロウ、ウミベミンク、
ニホンオオカミ。なるほどと思わせる選択で、それぞれが特
有の問題を抱えているのも上手くできたお話だ。
そしてその問題が主人公の大奮闘の末に解決される。それは
動物たちの問題でありながら、実は現代の人間たちの抱える
問題にも反映される。その辺の構成も巧みに感じられる作品
だった。
脚本はテレビドラマ『凪のお暇』などの大島里美。アニメー
ション制作は、2019年8月11日付題名紹介『銀河英雄伝説』
などのProduction I.G。また音楽を2018年6月24日付題名紹
介『寝ても覚めても』などのtofubeatsが担当している。
声優は川井田夏海、大塚剛央、飛田展男、藤原夏海、吉富英
治、福山潤、中村悠一。さらに立川談春、島本須美、寿美菜
子、家中宏、入野自由、花澤香菜、村瀬歩、陶山恵実里、氷
上恭子、清水理沙、諸星すみれ、七海ひろき、花乃まりあ、
津田健次郎らが個性的なキャラクターを演じている。
可愛い動物のキャラクターはお子様向けには絶好だが、大人
にも充分に楽しめる内容だ。それにしても、店のオーナーら
しきキャラクターと店の名前の関係は…。そこにもなかなか
深いものがありそうだ。
公開は2023年秋、全国ロードショウとなる。
『鯨の骨』
米アカデミー賞脚色賞にノミネートされた『ドライブ・マイ
・カー』の脚本を濱口竜介監督と共同で手掛けた大江崇允が
自らの監督作として公開するSF色も強い作品。
登場するのは婚約破棄された男性。不眠症になり落ち込んだ
彼は同僚の勧めでマッチングアプリに登録。返事をくれた若
い女性と喫茶店で待ち合わせて自室に誘うが…。シャワーを
浴びている間に彼女が自死、しかも遺体が消えてしまう。
そんなミステリアスな出来事の後、ARアプリ「ミミ」に参
[5]続きを読む
08月27日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る