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On the Production
by 井口健二
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■AALTO、燃えあがる女性記者たち、鯨のレストラン、沈黙の自叙伝
それは例えば2019年11月7日付「東京国際映画祭」で紹介の
『i−新聞記者ドキュメント−』などとは異なるものだが、
これも現実であり、この状況の中で奮闘する女性記者たちの
姿にも感動を覚えるものだ。その中に透かしのように見えて
くるリアルも巧みに描かれている。
とは言うものの、馴れないスマホを手に必死の映像取材をす
る姿は微笑ましくもあり、一方で英語の記載にアルファベッ
トから教える様子には震撼とするものもあった。これがイン
ドの現実なのだろう。そんなことも巧みに描かれた作品とい
うこともできる。
そんな中でのいろいろなドラマも描かれるが、その一つの顛
末が最後のテロップで明かされたのには、微笑ましさと共に
嬉しさも感じられたものだ。そんな感情にもさせてくれる作
品だった。
公開は9月中旬より、東京地区は渋谷ユーロスペース他にて
全国順次ロードショウとなる。
なお本作は、2021年の山形国際ドキュメンタリー映画祭にて
『燃え上がる記者たち』の題名で上映され、市民賞を受賞し
た作品だ。
『鯨のレストラン』
2009年10月20日付「東京国際映画祭」で紹介『ザ・コーヴ』
への反証として2015年に『ビハインド・ザ・コーヴ 捕鯨問
題の謎に迫る』を発表した八木景子監督が、再度捕鯨問題を
問うたドキュメンタリー。
監督の前作は観る機会がなかったが、元の映画祭作品に関し
ては記事を読んで貰えば判るように評価はしなかった。そん
な訳で前作に関しては何を今さらという思いだったが、この
作品は日本のIWC脱退の引き金にもなったそうだ。
そんな監督が再度放ったのはクジラを食料として考えること
の意義。ここではいろいろな角度からクジラを食することの
有利さが論証されて行く。それは感情論を抜きにすれば当然
の結論だ。ただこの感情論を打破するのが至難かな…。
個人的に言えば小学生の時は給食でクジラの竜田揚げを食べ
ていたし、大学生時代には渋谷109ができる前のくじら屋
にも行っていた。サラリーマン時代には新宿西口の鯨かつ屋
も昼食メニューの一店だった。
そんな目からは本作で紹介されるクジラ料理の数々はちょっ
と豪華過ぎて、庶民の食卓ではないなという感じにもなって
しまったが。こんな高級料理になってしまったのも、反捕鯨
のせいだと思えば納得できる展開だ。
もう一点言わせて貰えば、1978年にパリに行った際に現地で
上映されていたアニメ“La planète sauvage”の併映がクジ
ラ漁のドキュメンタリーだった。その作品では沖合で獲った
クジラを港まで曳航して解体する様子が描かれていた。
つまりクジラ漁はヨーロッパでも普通に行われており、その
文化は今どうなっているのか、その辺の検証もして欲しくな
ってきた。クジラ漁の禁止が人々に何をもたらしたか、文化
を考える上で大きなテーマのようにも感じるものだ。
なお映画の中では全人類が食する魚の総量の3〜5倍をクジ
ラ全体が消費しているとの論証が登場するが、2011年に他界
された作家の小松左京氏は生前、「クジラが増えすぎて南氷
洋の水産資源が危機になっている」と話されていた。
僕が会ったのは亡くなる何年も前だからかなり以前からこの
認識はあったようだ。そんなことも含めて反捕鯨団体の実態
を知りたくなった。それは感情論以上のインパクトになる気
もする。監督には今一度頑張ってもらいたいものだ。
公開は9月2日より、新宿K'cinema、9月15日からはアップ
リンク吉祥寺他にてロードショウとなる。
『沈黙の自叙伝』“Autobiography”
昨年の東京フィルメックスに『自叙伝』のタイトルで出品さ
れ、コンペティション部門・最優秀作品賞を受賞した2022年
製作のインドネシア映画。なお製作国にはインドネシアの他
に、ポーランド、ドイツ、シンガポール、フランス、フィリ
ピン、カタールが名を連ねている。
物語の背景は1960年代から90年代後半まで続いた軍事政権下
のインドネシア。ただし主人公が暮らすのは中央からは少し
離れた地方のようだ。そんな場所で主人公は将軍と呼ばれる
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07月02日(日)
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