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On the Production
by 井口健二
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■アウシュヴィッツの生還者、たまつきの夢、あしたの少女、ジェーンとシャルロット
しかしそんな時代に撞球場は、長引く戦禍の許では風紀を乱
すとして取り締まりの対象にもなっていた。
脚本と監督は2019年7月紹介『かぞくあわせ』でオムニバス
の一編を担当していた田口敬太。2017年に長編デビューの監
督は2019年度の本作が第2作となるものだが、その後も公開
作はあるようだ。
出演はインディーズ映画に多く出ている辻千恵、2018年6月
10日付題名紹介『きらきら眼鏡』などの金井浩人。他に佐藤
睦、山口大地、木原勝利、桜まゆみ、木田友和らが脇を固め
ている。
閉塞感が漂う時代背景の中で、若者が夢を語る。ある意味、
今の社会にも通じるところがあるのかな。昭和レトロが見事
に再現された作品ではあるが、COVID-19禍や身近にも感じる
戦争の雰囲気の中で、そんな現代性も考えてしまった。
映画の舞台となっている撞球場は群馬県下仁田町にある実在
の場所で撮影されたものだが、築 100年を超えるという既に
廃屋と化していた建物を美術スタッフなどが丁寧に再生した
ものだそうだ。
実際その風情だけでも充分に昭和レトロが再現されており、
ここで勝負あったという感じもした。1961年の『ハスラー』
などで戦後にも一時期ブームもあったから、その時代も含め
て残されていたのかな。
ただ映画の中でヒロインの台詞が一か所「ら抜き」だったの
は引っ掛かった。若い女優さんでは仕方がないが、監督はそ
の辺も注意するべきだったのではないかな。
公開は7月15日より、東京地区は渋谷のユーロスペースにて
ロードショウとなる。

『あしたの少女』“다음 소희”
2015年に日本公開された『私の少女』のチョン・ジュリ監督
による第2作。2006年7月紹介『グエムル−漢江の怪物−』
などのペ・ドゥナが前作に続いて主演を務める。
物語の前半は女子高校生キム・ソヒの話。学校の斡旋でとあ
る企業に実習生として働き始めた彼女は過酷な労働環境の中
でも成績を上げて行くが、執拗な業務の達成主義や実習生へ
の搾取などを目の当たりにし、徐々に失望して行く。
そんな中で勤務先のセンター長が自殺し、その事実を隠蔽し
ようとする上層部との対立が起きる。そして禁じられた葬儀
に出席した彼女にはさらなる圧力が掛かるが、その状況を学
校側は関知せず、両親にも取り合って貰えなかった。
そんな少女の事件を1人の女性刑事が追い始めるが…。
共演は2001年生まれのキム・シウン。大学に進学してから演
技の勉強を始めたという新進女優は、映画には2本の出演歴
があるが、本作にはオーディションで出演を勝ち取ったもの
だそうだ。
他にチョン・フェリン、カン・ヒョンオ、パク・ウヨン、チ
ョン・スハ、シム・ヒソブ、チェ・ヒジンらが脇を固めてい
る。
物語の前半は2017年に起きた実際の事件に基づくものだそう
で、本作と同様にコールセンターで実習生として働いていた
女子高校生が事件に巻き込まれている。そして実際の事件で
は企業側が改善を約束したとされるが…。
原題は直訳すると「次のソヒ」だそうで、若者が同様の事件
に巻き込まれることの繰り返しが否定できないという意味合
いの題名になっている。実際に韓国では若者の命を軽視する
風潮があるとの指摘もされていた。
それに比べて日本では少しはましかなとも思われるが、国民
総貧困化の時代では、何時こんな社会になってしまうかも…
とも思わされる作品だった。
因にペ・ドゥナの役柄は監督の創作となっているものだが、
前作と同様の女性刑事。ただし両者は直接繋がりのある役柄
ではない。そんな中で最後に判明するソヒとの関係はかなり
衝撃的だった。
そんな作劇のうまさも感じる作品だ。
公開は8月25日より、東京地区はシネマート新宿、大阪地区
はシネマート心斎橋他にて全国ロードショウとなる。

『ジェーンとシャルロット』“Jane par Charlotte”
フレンチ・ポップスのレジェンド=セルジュ・ゲンズブール
と、イギリス出身の歌手・女優・モデル=ジェーン・バーキ

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06月11日(日)
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