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On the Production
by 井口健二
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■エリック・クラプトン/アクロス24ナイツ、逃げきれた夢、キャロル・オブ・ザ・ベル
いずれにしても優柔不断というか、何も自分からは事を起こ
してこなかった主人公が、一つの切っ掛けで新たな道に踏み
だそうとする物語だが。かといって物語の中では具体的なも
のは提示されず、全ては観客の想い次第という展開。
まあこういう作品も以前からいろいろと散見されるが、結論
を言わないことがこの作品では主人公を浮き彫りにしてゆく
ということなのだろう。その点では監督のやりたかったこと
は伝わってくる感じの作品ではあった。
共演は、2019年2月17日付題名紹介『JK☆ROCK』などの吉本
実憂、2020年3月22日付題名紹介『のぼる小寺さん』などの
工藤遥。他に坂井真紀、松重豊、杏花、岡本麗、光石禎弘ら
が脇を固めている。
公開は6月9日より、東京地区は新宿武蔵野館、渋谷のシア
ター・イメージフォーラム他にて全国ロードショウとなる。

『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』
              “Щедрик/Szczedryk”
2019年の撮影で第2次世界大戦前後のウクライナを描き、現
在(2023年)のウクライナ情勢を予言したとも言われる作品。
物語の舞台はポーランドのスタニスワヴフ(現ウクライナ、
イバノフランコフスク)。そこに暮らすユダヤ人一家の住居
に店子としてポーランド人とウクライナ人の二家族が引っ越
してくる。
その内のウクライナ人一家は妻がピアノ教師で声楽家、夫は
プロのギタリストという音楽一家だった。そしてそれぞれの
家族には娘がいて、ウクライナ人の妻は娘たちに歌を教え始
める。
ところが戦争が勃発。最初にポーランドに侵攻したソ連軍は
ウクライナ領土のポーランド人の排除を開始する。その時、
一家の娘は偶然歌のレッスンを受けており、ウクライナ人の
妻は咄嗟に姪と称して娘を保護する。
その後に侵攻したドイツ=ナチスはユダヤ人狩りを開始。そ
こでもウクライナ人の妻は娘を匿うことに成功するが、ソ連
軍はウクライナ人抵抗組織の排除も開始する。それでも一家
は娘たちを匿い続け終戦を迎えるが…。
監督はオレシア・モルグレッツ=イサイェンコ。ドキュメン
タリー出身監督の長編映画は第2作とのことだが、実は直前
の作品がこの時代を描いたドキュメンタリーだったそうで、
その作品への想いがこの企画を実現させたとのことだ。
そして脚本のクセニア・ザスタフスカは、祖母の実体験に基
づいて物語を描いたとのこと。何ともはやという感じの物語
だが、歴史的に観ても全く矛盾のない物語が展開されている
ものだ。
映画の物語は1978年で終わりとなるが、ウクライナ人の苦し
みはその後も続き、そしてそれが現在も続いている。実際に
映画に出演したポーランド人とウクライナ人の子役は、現在
は祖国を離れて暮らしているという。そんな事実にも震撼と
させられる作品だった。
公開は7月7日より、東京地区は新宿武蔵野館、シネスイッ
チ銀座、UPLINK吉祥寺他にて全国ロードショウとなる。

04月16日(日)
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