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On the Production
by 井口健二
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■わたしたちの国立西洋美術館、658km陽子の旅、水は海に向かって流れる、ミーガン
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『わたしたちの国立西洋美術館』
2018年7月8日付題名紹介『春画と日本人』などの大墻敦監
督が、東京上野にある国立西洋美術館が抱える問題に迫った
ドキュメンタリー。
美術館の本館は2016年にル・コルビジェの建築作品として世
界文化遺産に登録されたものだが、その際に前庭が建築家の
意図を反映していないとの指摘があった。そこで2020年10月
から2022年春まで、他の法令に伴う改修と共に美術館を全面
閉館しての工事が敢行された。
本作はその間に工事中の美術館内部で行われた収蔵美術品の
移動や補修など、普段では見られない美術館の内部の作業が
記録されたものだ。それは映像の一部に暈しが入れられるな
ど、作業に参加した業者の企業機密にも触れるような微妙な
記録映像にもなっている。
という普段ではなかなかお目に掛れない記録がされたドキュ
メンタリーだが、監督の興味はそれだけに留まらなかった。
そこで監督は外部の目を導入して日本の美術館が抱える問題
に迫って行く。この辺は2018年紹介作でも感じた監督の問題
意識の高さが反映されているものだ。
その問題は、部外者の僕らでも薄々感じてはいたものだが、
それが具体的に提示されると、日本の文化行政の貧困さとい
うか、利権の発生しないところには目も向けない政治の闇が
見えてくる。
もちろん本作が描いているのはそれだけではなく、収蔵品の
選定など興味深いものは他にもあるが。そんなところも含め
て、国立西洋美術館のいろいろな側面が描かれた作品とも言
えそうだ。
ただし僕個人としては、ル・コルビジェの建築作品として世
界文化遺産に登録されたとは言うものの、建築家の設計思想
ではもっと大規模な構成が考えられていたもので、その辺が
反映されていないことは指摘して欲しかったかな。
出来れば建築家の構想をCGIででも再現して欲しかったと
ころだ。もしそれをやったら、登録を取り消されてしまうか
もしれないが…。とは言えそれだけに留まらない、それ以上
の問題点が本作では描かれている。
それにしてもこの美術館には、免震、耐震の設備や美術品を
守るための空調など、素晴らしい設備が施されていることは
よく理解できた。
公開は7月中旬より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ
フォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。
『658km、陽子の旅』
2017年4月2日題名紹介『武曲』などの熊切和嘉監督が、監督
の劇場デビュー作とされる2001年『空の穴』に出演の菊地凛子
(当時の芸名は菊地百合子)を主演に迎えた作品。因に2人は同
作を切っ掛けに人気を得たとされるが、特に菊地は2007年1月
紹介『バベル』でブレイクし以後は海外での出演も多くなる。
本作はそんな菊地の邦画では初の単独主演作だそうだ。
主人公は都会の片隅で暮らす40代前半の女性。夢を追い親の反
対を押し切って青森の田舎を飛び出したが、その夢はとおに諦
め、独身で定職もなくグダグダと過ごしている。そんな彼女の
許に20年間断絶のままだった父親の死が伝えられる。
そこで従兄の運転する車で従兄の家族と共に故郷に向かうこと
になるが…。とあるサーヴィスエリアで発生したちょっとした
アクシデントによって、彼女は財布もスマホも持たずに置いて
きぼりになってしまう。
この事態に彼女はヒッチハイクで青森に向かおうとするが…。
そんな彼女に、懸命に生きているシングルマザーや怪しい紀行
ライター、人懐こい女子や心優しい初老の夫婦など、いろいろ
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04月23日(日)
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