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On the Production
by 井口健二
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■推しが武道館いってくれたら死ぬ、渇水、探偵マリコの生涯で一番悲惨な日、テノール(仮題)
ていたが進んでいなかった。
その脚本が、2018年7月29日付題名紹介『止められるか、俺
たちを』や、2017年11月19日付題名紹介『孤狼の血』などの
白石和彌監督の目に留まり、白石の企画プロデュースで実現
されたものだ。
背景となる事象は社会性のある出来事だが、物語はその点に
フォーカスするのではなく、あくまでも主人公と幼い姉妹、
それによって想起される主人公の出自などがヒューマンドラ
マとして描かれる。
その点で、特に結末などには物足りなさを感じる向きもある
かもしれないが、これも人間社会の一側面を描いた作品と言
えるものだろう。そんなドラマが渇水というある種の極限の
中で語られる作品だ。
因に映画の結末は原作小説からは改変されているようだが、
それも映画という媒体が取るべき姿なのだろう。この辺は監
督らの愛も感じるところだ。
公開は6月2日より、全国ロードショウとなる。
『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』
2017年4月23日付題名紹介『獣道』などの内田英治監督と、
2009年8月紹介『母なる証明』でポン・ジュノ監督の助監督
を務めたという片山慎三監督の共同監督で、『獣道』で主演
の伊藤紗莉を主演に迎えたオムニバス作品。
物語の舞台は新宿歌舞伎町。その片隅でバーを営む主人公は
同時に探偵も稼業にしている。そんな主人公の許にFBIの
捜査官と名告る3人の男女から自衛隊が捕えアメリカへの移
送中に逃亡した宇宙人を探せという依頼が舞い込む。
その逃亡は宇宙人に寄り添っていた天本博士という科学者が
手引きしたというのだが…。そんな宇宙人探索劇を主軸に、
主人公の周囲にいる忍者や姉妹の殺し屋、行方不明の娘を探
す落ちぶれたヤクザの話などが展開される。
共演は竹野内豊、北村有起哉、宇野祥平。さらに乃木坂46
の久保史緒里、2022年7月紹介『夜明けまでバス停で』など
の松浦祐也、ミュージカル『刀剣乱舞』などの高野洸、舞台
女優の中原果南と島田桃依、2018年7月29日付題名紹介『止
められるか、俺たちを』などの井島空らが脇を固めている。
まあメインの話が宇宙人探しで『E.T.』へのオマージュみ
たいなものもあるから、ジャンルとしてはSF映画だと思う
のだが、その他のエピソードは多少荒唐無稽なものはあると
は言え、SF映画ファンを唸らせるようなものではない。ま
あ博士の名前にはニヤリとはしたが…。
と言いながら造型やVFXなどもそれなりの頑張りは感じら
れたところで、やるならもっと真っ当なSF映画も出来たの
ではないかな。そこはわざと外したような感じもするが、次
にはもっと真っ当な作品も観てみたいものだ。
それと伊藤紗莉のキャラクターがあまり立ってこないのも気
になった。これではただの狂言回しでしかない感じで、この
辺は映画的にもう少し工夫があっても良かったのではないか
な。せっかく旬な女優なのに、勿体ない感じもした。
主人公が営むバーの壁面にはハヤカワSF文庫が並ぶ本棚が
あったりして、それなりの仕掛けはあるようにも思ったのだ
が、それがただのお飾りなのも残念だったところだ。いろい
ろやりたいことが多そうな作品だけに惜しい感じがした。
公開は6月30日より、東京はテアトル新宿他にて全国ロード
ショウとなる。
なお本作は、2022年度の第40回ブリュッセル国際ファンタス
ティック映画祭で、WHITE RAVEN賞を受賞したようだ。
『テノール(仮題)』“Ténor”
6月公開予定のフランス映画を内覧試写で見せて貰った。
主人公はパリのすし店で出前の仕事をしながら会計士の勉強
をしている若者。そんな若者がパリオペラ座に寿司の出前に
行ったことから物語は始まる。
そこで若いレッスン生のアリアの練習を見掛けた時、立ち止
まっていることを咎められた若者は、思わずオペラ歌手の物
まねで美声を轟かせてしまう。その声に驚いたのはレッスン
の指導をしていた女性教師。彼女は直ちに店に若者の所在を
確認しようとするが…。
若者が暮らすのは下町の一角。そこで兄と暮らしていたが、
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04月02日(日)
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