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On the Production
by 井口健二
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■光をみつける、Rodeo/ロデオ、アダマン号に乗って、修験ルネッサンス
タグラムで見つけたというジュリー・ルドリュー。実際のバ
イカーだという女性が迫真の演技を見せている。他に脚本に
も参加のアントニア・ブルジらが脇を固めている。
パリ郊外育ちの監督は幼い頃から周囲にバイカーが多くいる
環境で育ったのだそうで、本作はそんな出自から自然に出て
きた物語のようだ。そして2016年に短編で同じくバイカーを
描いた“Au loin, Baltimore”を撮ったことから4年を掛け
て本作を描いている。
バイク映画というとアメリカや日本の映画では1000tクラス
の大型が格好良いとされるが、本作に登場するのはヤマハや
ホンダなどの 500cc以下の車種がほとんど。実際ヨーロッパ
では、シティバイクとしてこの方が好まれているようだ。そ
んな現実味にもあふれた作品になっている。
ただ結末に関してはこれがベストだったのかな。ここは何か
常識に囚われているようで、理想を高く掲げている割には少
し物足りなくも感じてしまった。実際にプレス資料によると
別の結末も検討されたとあり、その結末に至るストーリーも
観たかったものだ。
公開は6月2日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
渋谷、UPLINK吉祥寺他にて全国順次ロードショウとなる。

『アダマン号に乗って』“Sur l'Adamant”
2019年9月15日付題名紹介『人生、ただいま修行中』などの
ニコラ・フィリベール監督が、パリセーヌ川の左岸に設置さ
れたパリ中央精神科医療グループの一部を成すデイケアセン
ターを取材した日仏共同製作のドキュメンタリー。
川に浮かぶ木造船をモティーフに設計されたその施設には、
毎日朝から三々五々に人が集まってくる。そこには毎日来る
患者もいれば、定期的または不定期にくる患者もいる。そし
て毎週月曜日には、介護者と患者が一堂に会するミーティン
グが開かれ、日々のニュースの交換やその週に行う行事など
の検討が行われる。そんな様子が記録されている。
また施設で開催される絵画教室やギターやピアノなどの楽器
演奏、またギターに合わせてのヴォーカルなども披露される
が、患者特有の雰囲気はあるものの、ギターの演奏などはか
なりのテクニックが披露されるものだ。さらに絵画も見事な
ものが紹介される。そんな施設での日々の様子が、患者の中
に入り込んだ監督らによって克明に記録されている。
アメリカの映画評価サイトRotten tomatoesでは満足度100%
だそうだが、正直に言ってこれに適う被写体は他にはあり得
ないと言えるだろう。監督らはそれをただ記録しているだけ
のものであり、作為なども全く入る余地がない。つまりただ
写しただけで完璧な作品になってしまうものだ。もちろん編
集などの効果はあるがこれぞ映画の真骨頂だろう。
いやはや、これはずるいと言いたくなるような作品だった。
なお本作にはフィリベール監督とは20年来の交流を持つとい
う配給会社のロングライドが共同製作として参加している。
そして本作は2023年2月開催の第73回ベルリン国際映画祭に
おいて最高賞の金熊賞に輝いたもので、4月にパリでの一般
公開に続いて日本でも4月28日から緊急公開が決定。東京は
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて全国
ロードショウとなる。

『修験ルネッサンス』
2018年2月25日付題名紹介『熊野から』などの田中千世子監
督が、同作を含む三部作に続き紀伊半島を舞台に描いた紀行
ドキュメンタリー。
前三部作の舞台だった和歌山県新宮市に注ぐ熊野川、その源
流から紀伊山地を縦走して奈良県吉野川に至る熊野修験道。
それは飛鳥時代の役小角によって開設されたという日本最古
の修験の道だ。
しかし明治時代に修験道禁止令が発布されたことで荒廃し、
第2次大戦後に再興が始まったものの、多くの道は途切れて
いた。そんな歴史に埋もれた修験の道が昭和63年に復興。そ
こに至る道程や、以来35年を経た現状が紹介される。
実は田中監督自身は、2014年に三部作の第1作を撮った頃か
ら当地の修験に参加していたそうで、以来10年に亙って取材

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03月26日(日)
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