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On the Production
by 井口健二
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■銀河鉄道の父、フェイブルマンズ、聖地には蜘蛛が巣を張る
脚本は、スピルバーグと『ウエスト・サイド・ストーリー』
も手掛けたトニー・クシュナーとの共同で、2005年『ミュン
ヘン』以来の4度目となるタッグは、16年に亙る2人の関係
によって、濃密かつ繊細な物語に仕上げられている。
出演は、主人公にカナダ・バンクーバー出身で数多くのTV
シリーズに主演のガブリエル・ラベル。両親役に2010年12月
紹介『ブローン・アパート』などのミシェル・ウィリアムス
と、2006年11月紹介『リトル・ミス・サンシャイン』などの
ポール・ダノ。
さらに2019年11月紹介『ロング・ショット』などのセス・ロ
ーゲン、1980年『普通の人々』でオスカーにノミネート以来
90本以上の映画に出演しているというベテラン俳優ジャド・
ハーシュらが脇を固めている。
また音楽はジョン・ウィリアムスが担当しており、すでに引
退を発表している作曲家は、監督との最後にして28作目のコ
ラボレーションを達成している。
実は映画では家族の物語の間にユダヤ人の問題も描かれてい
るのだが、これが何ともステレオタイプで、スピルバーグと
感じられない。それは結局ユダヤ人問題とはこういうことな
のかとも思ってしまうが、何か違和感を持ってしまうもので
はあった。
公開は3月3日より、全国ロードショウとなる。
『聖地には蜘蛛が巣を張る』“Holy Spider/عنکبوت مقدس”
イラン出身だが北欧に拠点を置いて活動するアリ・アッバシ
監督が、2000年代の初頭に母国で起きた事件を題材に描いた
戦慄の作品。
主人公は首都テヘランで活動していた女性ジャーナリスト。
舞台は上空からの夜景が蜘蛛の巣のように見えるイラン北東
部の聖地マシュハド。その聖地では近年、街角に立つ娼婦を
狙った連続殺人事件が起きていた。
そんな聖地の取材にやってきた主人公だったが、彼女には首
都にいられなくなった事情もあるようだ。それでもさっそく
精力的な取材を開始するが、彼女の前には男尊女卑のイスラ
ムの壁が立ちふさがる。
そんな状況にもめげず少しずつ真相に迫って行く彼女だった
が、取材中に知り合った娼婦の死をきっかけに最後の手段に
出る決意を固める。そして映画は物語に並行して連続殺人犯
の実体も描いて行く。
出演はパリ在住のイラン人女優ザーラ・アミール・エブラヒ
ミと、マシュハド近郊の出身というイラン人俳優のメフディ
・パジェスタニ。因にかなり際どい描写も含む本作への出演
は2人のキャリアにリスクを負うものだ。
映画の中では殺人犯に対して聖地を浄化する英雄という見方
も提示され、それがイランの現実だと監督も語っている。監
督自身、事件の発生時にはまだイランにいたようだが、そん
な風潮が本作の制作の動機でもあるようだ。
そして殺人犯の最後の言葉は、実際の事件の犯人の最後の言
葉でもあるようで、描かれた経緯は真実に近いものと推測さ
れている。実際日本でもこのような実態はある訳で、そんな
事柄も僕らに突き付けられているようだ。
しかし監督は、事件そのものよりもそこに関った、関らずを
得なかった女性たちを描きたかったと語っている。これが男
尊女卑のイラクに暮らす女性たちの真の姿だと理解して欲し
いそうだ。
なお原題は本作の製作国がデンマークということで英語を先
にしたが、後に書いたペルシャ語も同じ意味のようだ。ただ
映画の中で殺人犯はspider killer と呼ばれており、それで
はspiderは娼婦のことになり、ちょっと矛盾する。
ここは邦題の方が良い感じだ。
公開は4月14日より、東京は新宿シネマカリテ、ヒューマン
トラストシネマ渋谷、TOHOシネマズシャンテ他にて全国順次
ロードショウとなる。
02月05日(日)
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