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On the Production
by 井口健二
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■デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム、TACKA(タスカー)、Winny
それを目にしたのが、都会での暮らしに夢破れて故郷の街に
戻って来た女。彼女もまた死に場所を探していたのかもしれ
ない。そんな女は男から保険金の半分の金額を借りていたこ
とにする借用書を渡され、殺してくれと頼まれる。
とは言うものの、女が罪に問われずに男を殺す手立てはなか
なか見つからない。そんな2人と偶然巡り合ったのが詐欺ま
がいの廃品回収を行っていた若者。若者は事故を装って男だ
けが死ぬある手立てを思いつくが…。
出演は、2017年9月3日題名紹介『光(大森立嗣監督)』など
の金子清文と、2018年11月18日題名紹介『赤い雪』などの菜
葉菜、それに連続テレビ小説『舞い上がれ!』に出演の佐野
弘樹。他に松浦祐也、川瀬陽太、足立正生らが脇を固めてい
る。
また企画・脚本協力で2009年8月紹介『行旅死亡人』などの
井土紀州、共同脚本に2018年1月21日題名紹介『名前のない
女たち』などの加瀬仁美、プロデューサーに2018年5月13日
題名紹介『菊とギロチン』などの坂口一直、音楽に石川さゆ
りや森山直太朗、AIらの楽曲も手掛ける斎藤ネコらが参加。
そして16mmフィルムによる撮影は、2016年8月紹介『闇金ウ
シジマくん』シリーズなどの西村博光が担当した。
題名はロシア語で憂鬱、憂愁、絶望などを意味するそうで、
正に本作のテーマと言える。そして本作は自殺若しくは自殺
幇助を描くもので、正直に言って今のご時世ではかなりヤバ
い作品にも思えるものだ。
そんな訳で多少構えて観始めた作品だったが、物語の初めの
方では詐欺まがいの廃品回収をする若者が老女に撃退される
シーンがあったりして、それは意外と真っ当な展開をする作
品だった。
結末に関してもある意味納得できるものだし、そこはかとな
く未来への希望もあったりして、現状は決して手放しで許容
できるものではないが、全くの絶望に終わらせなかったとこ
ろは評価すべき作品と思えた。
これは良質の作品と言っていいのだろう。
公開は2月18日より、東京は渋谷のユーロスペース他にて全
国順次ロードショウとなる。

『Winny』
2004年に起きた元東京大学大学院情報理工学系研究科数理情
報学専攻情報処理工学研究室特任助手、金子勇氏の冤罪事件
を追った実話に基づくドラマ作品。
2002年に「2ちゃんねる」のダウンロードソフト板で公開さ
れたP2P型通信方式を持たせたファイル共有ソフトWinnyは、
匿名性の強化されたファイル共有ソフトとして利用者の脚光
を浴びる。しかし利用者による送信可能化権の侵害が横行、
2003年に著作権法違反での逮捕者がでる。
このとき弁護士の壇俊光は、著作権法違反での逮捕者に興味
はないとしながらも、開発者が逮捕されたら弁護を買って出
ると断言する。そして2004年、開発者の金子が逮捕され、壇
は約束通り弁護に邁進するが…。
出演は壇俊光役に三浦貴大、金子役に東出昌大。他に皆川猿
時、和田正人、木竜麻生、池田大、金子大地、阿部進之介。
さらに渋川清彦、田村泰二郎、渡辺いっけい、吉田羊、吹越
満、吉岡秀隆らが脇を固めている。
脚本と監督は、2022年の『ぜんぶ、ボクのせい』で商業映画
デビューを果たしたばかりの松本優作。撮影監督と共同脚本
に2019年9月15日題名紹介『種をまく人』などの岸建太朗が
名を連ねている。
元々の企画はベンチャーキャピタルの代表を務める古橋智史
という人が2018年の「ホリエモン万博」に出品したものだそ
うで、当時話題になっていたPEZY Computing社の詐欺事件か
ら金子氏の事件を知って案出したということだ。
しかしこの2018年には、2016年に開設された漫画村が事件化
されたものであり、2021年に同件が実刑判決となったタイミ
ングは正に本作の意義が問われるものと言える。しかも本作
の金子氏は、最高裁で無罪を勝ち取っているのだ。
つまり本作では、ソフトウェアの開発者がその利用者の犯罪
にどこまで関与し、それによってどこまでの責任を問われる
かを明らかにすることが、作品における最も重要なポイント
だと考える。

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01月22日(日)
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