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On the Production
by 井口健二
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■百年の夢、戦慄のリンク、ピエール・エテックス レトロスペクティブ 、餓鬼が笑う
神田創、照明を『夜明けまでバス停で』などの丸山和志、音
響効果を『川っぺりムコリッタ』などの大河原将、編集を
『クライマーズ・ハイ』などの須永弘志、音楽をTVアニメ
「約束のネバーランド」などの小畑貴裕が担当している。
プレス資料の監督による製作日記にもあったが、試写の際の
監督の挨拶によると、中国では幽霊の出る映画はご法度との
こと。また事件は必ず警察が解決しなければならず、さらに
同性愛的な表現も禁止なのだそうだ。
そんなかなり制約の中での映画制作だったようだが、本編を
観ていると、その産みの苦しみみたいなものは良く判る作品
だった。ただしそんな中にJホラーへのオマージュみたいな
ところもあり、それなりには楽しめた。
でもまあ、監督には制約なしでのリメイクに挑戦してもらい
たい、そんな思いもしてくる作品だった。
公開は12月23日より、東京は新宿シネマカリテ他にて全国順
次ロードショウとなる。
ピエール・エテックス レトロスペクティブ
❶『恋する男』“Le Soupirant”+『破局』“Rupture”
❷『ヨーヨー』“Yoyo”
❸『健康でさえあれば』“Tant qu'on a la santé”
+『絶好調』“En pleine forme”
❹『大恋愛』“Le Grand Amour”
+『幸福な結婚記念日』“Heureux Anniversaire”
1953年『ぼくの伯父さんの休暇』などで知られるジャック・
タチ監督の盟友ともされるピエール・エテックスが1961年頃
から発表した長編4作品と短編3作品が特集上映される。
エテックスは1928年11月23日生まれ。幼い頃からチャップリ
ンやキートンなどの無声映画に夢中となり、サーカスやキャ
バレーの芸人として活動していたが、1953年のタチ監督作品
を観て感激、自らの芸への助言を求めて監督に会いに行き、
映画界に誘われたとのことだ。
そして1958年タチ監督の『ぼくの伯父さん』で映画界入り。
1961年にタチ監督の縁で脚本家ジャン=クロード・カリエー
ルと組んで短編『破局』を発表。1962年発表の初長編『恋す
る男』では、1953年のタチ作品以来となる喜劇映画でのルイ
・デリュック賞に輝いている。
という監督の特集上映だが、実は今回はスケジュールの都合
で❶の2作品を見逃してしまっており、その辺は少し申し訳
ないのだが、❷〜❹の作品で言うと、それは無声映画へのオ
マージュとサーカス芸への憧れに溢れていた。特に❷の作品
では、手袋をはめる逆転映写にニヤリとさせられた。
この他にも❸の『健康でさえあれば』はコント集のような感
じの作品だが、ドラキュラをモティーフにした夢と現実が入
り乱れた作品や、かなりシュールなタッチの作品も観られる
ものだ。実際には公開当時は好評ではなかったようだが、今
観ると理解の進む作品になっている。
さらに❹では、これはシュールと言うよりはファンタシーを
映像化しているもので、ある種の映画の本領とも言える作品
になっていた。無声映画へのオマージュであると同時に、後
の作品への影響も大きく感じられるものだ。正にレトロスペ
クティブという感じの作品かもしれない。
なおこれらの作品は、一時期は権利の関係で上映が全く不能
だったものだそうで、それをジャン=リュック・ゴダールや
デヴィッド・リンチ、ウディ・アレン、テリー・ギリアム、
ミシェル・ゴンドリーらの尽力によりエテックスの権利を回
復。監督の許での修復がなされたものだ。
公開は12月24日より、東京渋谷のシアター・イメージフォー
ラムにて、4週間限定の上映となる。
『餓鬼が笑う』
古美術商であり本作の製作も手掛ける大江戸康のオリジナル
脚本に基づき、2018年9月紹介『十年 Ten Years Japan』の
一編『PLAN75』の早川千絵監督などを輩出するENBUゼミナー
ル出身で、PFF アワード入選者でもある平波亘が脚本・監督
した作品。
本作は2022年8月開催の第44回モスクワ国際映画祭アウト・
オブ・コンペティション部門でも上映された。
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11月13日(日)
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