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On the Production
by 井口健二
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■若者は山里をめざす、スクロール、仕掛人・藤枝梅安
ノブアキ、忍成修吾、相田翔子らが脇を固めている。
オープニングはかなりの長回しで、横浜にある1946年開業の
ダンスホールが登場するなど、不思議な雰囲気が横溢する。
そしてラストでは大田区雪谷で1957年創業の銭湯が舞台にな
るなど、昭和レトロが満喫できる作品にもなっている。
撮影監督は宇多田ヒカルやあいみょん、米津玄師、King Gnu
などのミュージックヴィデオを手掛ける川上智之。映画の全
体がスタイリッシュとも言える見事な映像で綴りこまれてい
る。
そんな映像の中で物語は正に現代の若者が直面している現実
が描かれているのだろう。僕自身は最早そんな年代からはか
け離れた所にいるものだが、そんな僕にも共感はできる作品
には仕上げられていた。
清水監督は上記紹介作の後、昨年度には1997年『CUBE』
の公式に認められたリメイクなども手掛けており、かなり不
思議な雰囲気を描くことには長けている監督のようだ。そん
な監督がリアルに挑んだ作品とも言える。
そしてそこに川上撮影監督の映像が絡んで、正しく不思議、
且つリアルな映画が作り出された。新しい映像世界の誕生、
そんなことも予感させる作品だ。
公開は2023年2月より、ロードショウが予定されている。
『仕掛人・藤枝梅安㊀』
『仕掛人・藤枝梅安㊁』
原作者・池波正太郎の生誕 100周年を記念してその代表作と
も言えるシリーズが2部作で映画化された。実は第1作の試
写は先週観たものだが、2作纏めて紹介すべき作品と考え、
今週に先延ばしした。
江戸市中を少し離れた品川台町に居を構える鍼医者の梅安は
町人の治療も分け隔てなく、人望も厚い地元の名士だった。
しかし彼にはその表の顔とは背反する闇の仕掛人という裏の
稼業があった。
それは蔓と呼ばれる元締めからの指示を受けて、金子で人を
殺すというもの。しかも梅安の手口は本業の鍼を用いて証拠
を残さず、役人には自然死と納得させる巧妙なものだった。
そして2部作では江戸と京都での仕事が各々描かれる。
その1作目の江戸の話では、遊郭で繁盛店を切り盛りする女
将に纏わる話。第2作では、京の都を跋扈するやさぐれ集団
を相手に、梅安と相棒の彦次郎の仕事ぶりが描かれる。そし
てそれに併せて彼らの出自が語られるものだ。
出演は2作通してのレギュラー陣が豊川悦司、片岡愛之助、
菅野美穂、小野了、高畑淳子、小林薫。加えて第1作には早
乙女太一、柳葉敏郎、天海祐希。第2作には一ノ瀬颯、椎名
桔平、佐藤浩市が登場する。
監督は2006年『星になった少年』などの河毛俊作、脚本は同
作や、2009年8月紹介『風が強く吹いている』などの大森寿
美男が担当している。
原作は、映画では田宮二郎、緒形拳、萬屋錦之介、テレビで
は小林桂樹、渡辺謙、岸谷五朗など多くの映像化で知られ、
また人気シリーズ「必殺仕事人」の翻案元ともされるものだ
が、本作ではかなりダークな仕事ぶりに驚かされた。
それは原作でも、仕掛人は蔓を信頼して仕事の背景などは問
わないとされているようだが、本作の中でも梅安の殺しが必
ずしも正義に基づかないし、さらに非情さでも、いわゆる正
義のヒーローとは程遠い。
そんなダークヒーローの話ではあるが、梅安の心の底にはそ
の仕事への後悔もあるようで、そんな人間味も魅力というシ
リーズではあるのだろう。その人間味を豊川悦司は巧みに演
じている作品とも言えそうだ。
なお第1作のエンディングロール後には第2作への繋ぎの仕
掛も設けられるが、第2作のエンディングロール後は、別の
仕掛けとなっていたようだ。でも出来たら第3作も観てみた
い作品ではあった。
公開は第1作が2023年2月3日より、第2作は4月7日より
いずれも東京は新宿ピカデリーをメイン館として全国ロード
ショウとなる。
11月06日(日)
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