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On the Production
by 井口健二
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■呪い返し師−塩子誕生、夜、鳥たちが啼く、光の指す方へ
たいと提案、実現した作品だそうだ。
どちらかと言うと芸術映画の範疇に入りそうな佐藤原作の映
画化作品と、職人監督とも言われる城定監督とは一見相容れ
ない関係のようにも思えるが、本作を観るとまごうことなく
城定監督の人間への洞察力が生きた作品と言える。
その点は上記『ビリーバーズ』や脚本を手掛けた2022年8月
紹介『よだかの片想い』からも感じるところだ。特に主演の
2人の絡みや、過去のそれぞれの経緯などは、先の佐藤原作
作品に勝るとも劣らない見事な演出で描かれていた。
これが映画だと言い切れる作品だ。
公開は12月9日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード
ショウとなる。

『光の指す方へ』
東京都青梅市に所在する東京都で唯一の木造建築の映画館シ
ネマネコを舞台にしたドラマ作品。
主人公はクラスで唯一の大学受験に失敗した浪人生。将来の
見通しもなく悶々としている彼に、海外出張で家を空ける母
親から近所で映画館を開いた姉の許へ親戚から届いたミカン
を届ける役目が命じられる。
そんな訳でふらふらと映画館にやってきた主人公。ところが
姉から無理矢理映画館の手伝いをさせられた主人公は少しず
つ映画の魅力に嵌って行く。そして集客の企画として小耳に
はさんだフィルム上映を提案するが…。
脚本と監督は1974年生まれ、2000年から映像制作を始め、長
編映画は2015年に『きみとみる風景』という作品を手掛けて
以来2作目という今西祐子。長年映画畑にいた監督の映画愛
が込められた作品だ。
出演は2016年『14の夜』という作品で主演デビューした犬飼
直紀。他に舞台女優の松負f子、アーティストの伊藤悌智ら
が脇を固めている。
なお作品には実際に35oの映写機も登場し、2台の映写機の
切り替えの様子なども紹介される。この辺の描写には2022年
4月紹介『ワン・セカンド』なども髣髴としたが、チャン・
イーモウ監督に負けない映画愛と言えそうだ。
なお本作の映写指導及び映写機材の提供は、有限会社鈴木映
画の全面協力によるもので、映画には同社の機材倉庫も重要
なシーンとして登場する。これも映画ファンにはたまらない
シーンと言えそうだ。
公開は11月18日よりシネマネコで先行上映の後、東京は渋谷
ユーロスペース他にて全国順次ロードショウとなる。

09月11日(日)
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