ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459634hit]
■霧幻鉄道、映画 バクテン!!、1640日の家族、アンデス
見事な映像が展開される。
しかも映画版では、さらにその背景に3D-CGIが導入され、そ
の中で視点を縦横に移動させる映像は、観ていて思わず興奮
してしまう美しさに表現されていた。それは実物をドローン
撮影でも同じかもしれないが、アニメーションという形態の
中で特に見事に昇華されていた。
監督はシリーズも手掛けた2016年『舟を編む』などの黒柳ト
シマサ。脚本もシリーズを手掛けた2022年『機動戦士ガンダ
ム/ククルス・ドアンの島』などの根元歳三。因にクレジッ
トには原作者名があるが、ネットの情報ではオリジナルアニ
メーションとなっている。
声優は土屋神葉、石川界人、小野大輔、近藤隆、下野紘、神
谷浩史、櫻井孝宏、佐倉綾音ら、シリーズと同じメムバーが
担当している。
という作品だが、実は僕が観た試写の時点では3D-CGIとモー
ションキャプチャーの映像との繋ぎ目で少し乱れがあった。
ただし僕が観たのは試写の初回だったので、もしかすると公
開までに修正があるかもしれない。
それと映画後半でマットへのプロジェクションマッピングの
シーンが登場するが、これは映画のクライマックスでもやっ
て欲しかったかな。最近話題になっているものなのでこの辺
も期待したい。
公開は7月2日より、東京は新宿バルト9、TOHOシネマズ日
比谷他で全国ロードショウとなる。
『1640日の家族』“La vraie famille”
フランスの里親制度を背景とした実話に基づくとされる本国
では2021年公開のドラマ作品。
登場するのは夫婦と3人の子供のいる一家。子供たちも仲良
く遊ぶ一家だが、一番下の子は寝る前のお祈りが他の家族と
異なる。実はその子は生後18か月の時に一家の許にやってき
た里子だったのだ。
それでも他の子と宗教以外では分け隔てなく育ててきた一家
だったが…。ある日、その子の実の父親が息子を還してくれ
と申し立ててくる。それは里親一家には抗うことのできない
法律に従ったものだった。
そんな一家の残された日々が描かれて行く。
脚本と監督は短編映画の出身で、2017年の長編デビュー作で
映画祭受賞歴もあるファビアン・ゴルジュアールの第2作。
デビュー作は代理母を描いたコメディだったようだが、本作
は監督の実体験に基づく物語だそうだ。
出演は、2017年12月紹介『ロープ 戦場の生命線』などのメ
ラニー・ティエリー、フランス版『カメラを止めるな!』に
出演のリエ・サレム、それに2012年8月紹介『リヴィッド』
などのフェリックス・モアティ。そして子役のガブリエル・
パヴィが素晴らしい演技を見せる。
配偶者の死去などで、残された片親が世話し切れなくなった
幼い子供の面倒は、日本の場合は児童施設に預けられるのが
ほとんどのようだ。それに対してフランスでは多くが里子に
出され、健全な家庭での成長が推奨される。
しかもそこでは里親と同時に実の親との交流も行われ、本作
のように週末は実の親と過ごすようなことも普通のようだ。
しかしそこに本作のような事態も起こりうる。本作は監督の
実体験に基づくとされているものだ。
もちろん監督はこのやり方を批判しているものではないが、
それにしてもやるせない物語で、何か他に解決策はないのか
とも思ってしまう。その辺を考えさせるのが本作の目的でも
あるのだろう。
ただし家族間に入る行政官の描き方には、かなり厳しい目も
向けられている感じだが…。
公開は7月29日より、東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国
ロードショウとなる。
『アンデス、ふたりぼっち』“Wiñaypacha”
2017年製作のペルー映画で、5月紹介『マタインディオス、
聖なる村』に先駆けたシネ・レヒオナル(地域映画)の一篇。
本作は2018年のグアダラハラ国際映画祭(メキシコ)で最優秀
新人監督賞と撮影賞を受賞した。
物語の舞台は、背景に氷河や滝も見えるアンデスの山懐。電
気もガスもない寂れた高原に老夫婦が暮らしている。二人は
神を信じ、助け合いながら生活しているが、その暮らし振り
は厳しさに満ちている。そして悲劇が襲う。
[5]続きを読む
06月19日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る