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On the Production
by 井口健二
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■アプローズ、ALIVEHOON、とら男、島守の塔
そして監督と編集は、2014年5月紹介『キカイダーREBOOT』
などの下山天。撮影には車載カメラやドローンなども多用さ
れているが、本作の見どころの一つは監督自身による巧みな
編集だろう。特に登場するレースというかドリフトシーンの
捉え方が視点や緩急を変えて見事だった。
ドリフトと言うと映画の台詞にも出てくる「峠の走り屋」を
描いた2005年6月紹介『頭文字D』を知っている程度で、正
直に言ってそれ以外のことは全く知らなかった。ましてやそ
れが国際的なモータースポーツになっているということにも
驚かされた。
一方、eゲーム=eスポーツに関しては近年耳にする機会も
多くなったが、本作ではどちらかに偏るのではなく、その融
合も心地よく描いている。それはどちらのファンにも納得の
できる展開で、製作者たちにはその辺の状況が良く理解され
ての作品とも言えそうだ。
出演は、2018年8月26日題名紹介『ビブリア古書堂の事件手
帖』などの野村周平と、2018年4月15日題名紹介『虹色デイ
ズ』などの吉川愛。他に劇団 EXILEのメムバーで2016年9月
25日題名紹介『たたら侍』などの青柳翔、2019年1月20日題
名紹介『翔んで埼玉』などの福山翔大。
さらに陣内孝則、本田博太郎、モロ師岡、土屋アンナらが脇
を固め、2006年公開『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』
のスーパーバイザー及びドライバーを務めたプロレーサーの
土屋圭市が特別出演と監修も担当している。他にもプロレー
サーが多数出演しているようだ。
公開は6月10日より、東京はイオンシネマ シアタス調布、
池袋HUMAXシネマズ、ユナイテッド・シネマ アクアシティお
台場他で全国ロードショウとなる。

『とら男』
石川県警の元刑事が在職中の未解決事件を再捜査する。その
模様を元刑事本人の出演で描いたセミドキュメンタリー。
映画の主人公は東京の大学に通う女子学生。植物学の授業で
メタセコイアに興味を持った彼女は、ネット検索でその植物
が石川県に自生していることを知り現地を訪問する。そして
金沢おでんの店で食事中に元刑事と出会う。
元刑事の名前は西村虎男。彼が追う未解決事件は1992年9月
に起きた「金沢女性スイミングコーチ殺人事件」。その事件
の被害者の髪にメタセコイアが絡みつき、事件の犯行現場が
特定されたのだ。
そしてその事件にも関心を持った主人公は元刑事と共に事件
の再捜査を開始するが…。すでに公訴時効も成立している過
去の出来事には人々の関心も薄かったが、徐々に証言する人
も現れ始める。
脚本と監督は石川県生まれでニューヨーク市立大学卒業とい
う村山和也。大学在学中から映像制作を始め、帰国後は映像
ディレクターとしてCM−MVなどを手掛けながら短編映画
も発表していたという俊英の長編デビュー作だ。
共演は加藤才紀子。加藤は2016年1月紹介『リップヴァンウ
ィンクルの花嫁』でスクリーンデビュー、2019年11月7日付
「第32回東京国際映画祭」で紹介『海辺の映画館―キネマの
玉手箱』にも出ており、本作が初主演作となっている。
因に映画の中で主人公のメモ帳に描かれるイラストや垂れ幕
の筆字は全て加藤自身が描いたものだそうだ。
試写会の後で監督と出演者2人による会見があり、そこでは
何故この事件が未解決に終ったかというような発言も飛び出
した。それによると元刑事は事件捜査の途中で突然配置転換
になったのだそうだ。
しかも今回の映画撮影に関しても、石川県警からは妨害はな
かったものの協力は全く得られず。他にも行政からの協力は
ほとんど拒絶されたようだ。これは相当の裏事情をうかがわ
せる発言が出ていた。
その一方で映画の後半に登場する県警の刑事は、名前をクレ
ジットに載せない約束で、現職の刑事が出演しているとのこ
と。元刑事には犯人の目星は付いているということだが、こ
の辺にも複雑な事情が隠されているようだ。
警察の癒着というのは、湾岸署や特命課でもいろいろ描かれ
ているが、絵空事のようなことが現実に起きている。そんな
ことが描かれた作品だ。

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05月29日(日)
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