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On the Production
by 井口健二
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■三姉妹、帰らない日曜日、宇宙人の画家
出演は、1998年オーストラリア生まれで撮影時22歳の新星オ
デッサ・ヤング。相手役に1990年イギリス生まれのジョシュ
・オコナー。その脇をコリン・ファース、オリヴィア・コー
ルマンらが固め。さらにグレンダ・ジャクソン、ソープ・デ
ィリスらが登場する。
監督は、2018年11月11日題名紹介『バハールの涙』などのエ
ヴァ・ユッソン。脚本は主にテレビで活躍し2016年『レディ
・マクベス』で英国インディペンデンス・フィルム・アワー
ド受賞のアリス・バーチによる映画2作目のようだ。
実は1924年という年号が最初はピンと来なかったのだが、物
語が進む内にその持つ意味が重くのしかかってくる。そして
それが1948年という年号に重なって行く構成も見事だった。
しかもそれを巧みな演出で描き切っている。これもまた映画
の醍醐味を感じさせてくれる作品だった。
こういう作品を観ていると本当に嬉しくなる。
公開は5月27日より、東京は新宿ピカデリー、ヒューマント
ラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋他で全国順次ロード
ショウとなる。

『宇宙人の画家』
保谷聖輝監督は1999年岐阜県恵那峡生まれ、高校時代に地元
の映画祭で入賞を果たし、京都大学文学部・宗教哲学専攻で
在学中の2019年に撮った作品がカナザワ映画祭「期待の新人
監督」2020グランプリを受賞。その基金によるスカラシップ
で制作された2021年度の作品。
巨大な観音像が聳え虚無ダルマという首領の居る犯罪組織に
支配された裏日本のK市を舞台に、組織が究極の兵器を入手
するとの情報を基に送り込まれた米国スパイの活動と、その
物語を描いた漫画の作者の少年を巡る物語。
有り勝ちな発想の作品だが、スパイの話は活劇であり、少年
の話は苛めの絡む学園もので、この両者に奇妙な符合がある
ところは少し新趣向と言えるかな。ただしそれを97分の上映
時間に収めるとかなり舌足らずな作品になる。
実際問題として新人監督が書いたオリジナルの脚本はもっと
シンプルだったようだが、カナザワ映画祭の主催者でもある
本作の製作者がそれに膨らみを持たせたとのこと。その辺で
新人監督の力量を超えてしまった面はあるようだ。
とは言えその辺を見極めるのが製作者の仕事とも思えるが、
その人物の来歴は良く判らないけど、映画製作の実務にはあ
まり携わったことがなかったのかな? そういう制作現場が
監督の思いとは裏腹になってしまったのかも知れない。
因に同じスカラシップで製作の作品は他にもあるようだが、
データを観るとその作品の監督はシネマワークショップなど
で学んできた人のようで、その辺の違いが出てしまった可能
性もある。
いずれにしても本作の監督には、この体験を基に新たな作品
へ挑戦して欲しいものだ。ただしタルコフスキーの『ソラリ
ス』が好きでスパイ活劇は少し違う感じもする。オリジナル
はそういう脚本ではなかったようだが。
出演は、2019年の映画『阿吽』などの渡邊邦彦と保谷監督の
前作にも出ていた丸山由生立。他にプロラッパーの呂布000
カルマ、Kカップアイドルの桐山瑠衣、2015年5月紹介『戦
慄怪奇ファイル超コワすぎ!』などの大迫茂生、芸人のシソ
ンヌじろうらが脇を固めている。
公開は7月2日より、東京は新宿K's cinema、アップリン
ク吉祥寺他で全国順次公開となる。

 今回は以上の3本。次週はゴールデンウィーク明けのため
更新はありません。

05月01日(日)
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