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On the Production
by 井口健二
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■歩いて見た世界、マイスモールランド、ゴースト・フリート、ツユクサ、FLEE、エリザベス
僕らには考えも及ばない過酷な現実を描いている。
全くもって恐ろしい現実。クルド難民を苦しめる出入国管理
及び難民認定法にはさらに過酷な改訂が進められているとの
ことで、この映画を観て1人でもこの問題に関心を持つ人が
増えてくれたら…、そんなことも考えてしまう作品だった。
出演は、雑誌ViViの専属モデルも務める嵐莉菜。イラン、イ
ラク、ドイツなど多国籍にルーツを持ち、クルド人ではない
がその心情は理解できるという2004年生まれが、正に等身大
で映画初出演、初主演を果たしている。
共演は、2020年の大森立嗣監督作品『MOTHERマザー』で新人
賞を総なめにした奥平大兼の映画出演第2作。他にアラシ・
カーフィザデー、リリ・カーフィザデー、リオン・カーフィ
ザデー。さらに平泉成、池脇千鶴、藤井隆、韓英恵、サヘル
・ローズ、小倉一郎らが脇を固めている。
公開は5月6日より、東京は新宿ピカデリー他で全国ロード
ショウとなる。

『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』
                    “Ghost Fleet”
世界有数の水産国の一つとされるタイ王国での漁業の実態に
迫るドキュメンタリー。
その実態は、無法・無規制の乱獲によって沿岸の水産資源が
減少し、漁獲は遠洋漁業に頼らざるを得ない。しかしタイの
漁師の多くは遠洋航海を嫌い、そのため遠洋に出る人員の確
保に問題が生じた。そこで行われているのが、街で若者を拉
致し、そのまま遠洋漁船に乗せて奴隷のごとくに使役すると
いうものだった。
いやはや、奴隷なんて言葉が21世紀になって使われるという
のは…。確かに2012年6月紹介などの『闇金ウシジマくん』
にも借金の清算に遠洋漁船で働かせるなんて話はあったが、
こんなことが現実に、しかもかなり大規模に行われていると
いうのだ。
そして洋上では、船団を組んで常に陸地の見えない海域で漁
を続け、漁獲は全て運搬船で積み出し、食料や船の燃料はそ
の運搬船が運んでくるという。さらに病気や怪我をしたり反
抗を試みたら、そのまま海に放り込まれて海の藻屑とされて
しまう。そんな正に奴隷の扱いなのだ。
それでもまれに船が沿岸に近付いたときに、決死の覚悟で海
に飛び込み陸地に逃れる者はいる。本作はそんな逃亡者の救
助のためにインドネシアに向かう労働者権利ネットワークの
活動家の姿を追って行くものだ。なお映画に登場する人物は
すでに2000人以上を救出し、2017年度のノーベル平和賞にも
ノミネートされたという。
それにしても、こんなことが実際に行われているとは、僕は
この映画を観るまで想像もしていなかった。こういうことを
知るのも映画の大きな価値だと思えるものだ。その意味でも
価値ある作品と言える。因に日本が輸入する水産物の30%前
後は違法漁業によるものという統計もあるようだ。
監督は、ニューヨークタイムズやBBCにも作品を提供して
いるシャノン・サーヴィスと、南カリフォルニア大学で映画
制作課程を卒業のジェフリー・ウォルドロン。
本作は2018年のトロント国際映画祭など、世界10箇所以上の
映画祭でも上映されたものだ。
公開は5月28日より、東京はシアター・イメージフォーラム
他にて全国順次ロードショウとなる。

『ツユクサ』
2019年8月4日題名紹介『閉鎖病棟−それぞれの朝−』など
の平山秀幸監督が、同作に出演の小林聡美を主演に迎えて、
2007年の『やじきた道中 てれすこ』でも組んだ安倍照雄の
オリジナル脚本を映画化した作品。
小林が演じるのは、ナイロンタオルの工場で働くアラフィフ
の女性。彼女は帰宅中に乗っていた車が衝撃でひっくり返る
事故に遭遇する。その車のボンネットには、熱く熱せられた
穴が開いていた。しかし大した怪我はなく、事故処理を終え
た彼女は同僚の女性に電話して迎えに来てもらうが…。
その女性の息子は天文マニアで、直前に流星の落下を目撃し
ていたことから車に隕石が当たったと推察する。ただし隕石
が人に危害を及ぼす可能性は1億分の1だという。そして翌

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04月17日(日)
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