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On the Production
by 井口健二
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■CURED、シラノ(僕は猟師になった、HARAJUKU、#ハンド全力、大海原のソングライン、未成年、暗数殺人、ANNA、わたしはダフネ、マルモイ)
という名作戯曲を、『時計じかけのオレンジ』などの原作者
として知られるイギリスの作家アンソニー・バージェスが翻
訳、脚色、1973年にブロードウェイで初演された英語版。
物語は17世紀のフランスに実在した人物を主人公に、容姿ゆ
えに自らの恋愛を諦めた剣豪作家が、本当は愛する女性ロク
サーヌと同僚兵士の恋愛成就のために文才を活かして奮闘す
るというもの。そこから三十年戦争のアラス包囲戦を挟んで
15年に亙る切ない男の心情が見事に描かれた作品だ。
出演は2017年3月19日題名紹介『美女と野獣』でベルの父親
役を演じたケヴィン・クラインと、2016年10月紹介『MIC
メン・イン・キャット』などのジェニファー・ガーナー。そ
れに2013年4月紹介『ファインド・アウト』などのダニエル
・サンジャタ。
舞台の演出は2003年の“Nine”などで5度のトニー賞最優秀
演出賞にノミネートされ、日本でも多くの演劇プロジェクト
に参加しているイギリス出身のデヴィッド・ルヴォー。
本作では2007年にブロードウェイのリチャード・ロジャース
劇場で演じられた舞台が収録されており、画質などの点では
少し物足りないかな。でもお陰で主演のケヴィン・クライン
が若々しくて、特に韻を踏んでいるために一言も間違えられ
ない長台詞を見事に演じているのは素晴らしい。
また、ジェニファー・ガーナーが2005年『デアデビル/エレ
クトラ』などで見せたアクションの切れを剣戟シーンで発揮
しているのも見どころだ。
公開は3月13日より、東京は築地の東劇他で全国順次ロード
ショウとなる。
因に本ページでは2017年8月に『ホリデイ・イン』を「松竹
ブロードウェイシネマ」として紹介しているが、今回の作品
は第4弾と銘打たれており、2017年のものは現在のリストか
らは外されているようだ。
なお「松竹ブロードウェイシネマ」では2020年ラインナップ
として、夏にシンディ・ローパー作詞・作曲でトニー賞受賞
の“Kinky Boots”と、秋にはメアリー・ブリジット・デイ
ヴィス主演による“A Night with Janis Joplin”の公開も
予定されている。
この週は他に
『僕は猟師になった』
(2019年にNHKで放送されたノーナレーションのドキュメ
ンタリーに、約300日の追加取材と池松壮亮のナレーション
を施して作られた完全版。登場するのは京都大学在学中に猟
の免許を取ったという千松信也氏。以来19年間、京都の市街
からさほど離れない山との間の土地に暮らし、サラリーマン
の傍ら年間3〜4ヶ月の猟期は毎日山に入って罠を仕掛け猪
や鹿を獲る。そして獲物は自らの手で捌き、調理して日々こ
れを食す。映画の中には年間150億円を超えるという獣害の
話や、京都の風物なども挿入されるが、猟師本人はそんなこ
とには関知せず、妻と2人の息子との淡々とした暮しが描か
れて行く。獲物を捌くシーンなど鮮烈な映像も出てくるが、
全体としては男のロマンみたいなものかな。法令の話や罠の
仕組み、獣道の歩き方などの解説と共にしっかりと描かれ、
これはこれで良い作品になっている。公開は6月6日より、
東京は渋谷のユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『HARAJUKU 天使がくれた七日間』
(2019年3月24日題名紹介『最果てリストランテ』などの松
田圭太脚本、監督で若者の町、原宿を舞台にしたファンタス
ティックな要素もある作品。主人公は銭湯の経営者。しかし
営業前の掃除中の浴室で見知らぬ若者と出会う。その若者は
天使で、主人公の魂を奪いに来たというのだが…。実は天使
は3日も遅刻しており、その言葉を盾に主人公は7日の猶予
を貰うことに成功する。それはその間にある目的を果たすた
めだった。出演は2013年11月紹介『幕末奇譚 SHINSEN5』な
どの馬場良馬と、2019年『映画刀剣乱舞』などの椎名鯛造。
他に平野良、テジュ、坂ノ上茜、高城亜樹らが脇を固めてい
る。物語はそれなりにきっちりと作られているが、何か深み
がないというか心に残るものがない。単純には主人公の思い
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03月01日(日)
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