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On the Production
by 井口健二
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■ナイチンゲール、三島由紀夫VS東大全共闘(モルエラニ、ハーレイ・クィン、仮面病棟、ペトルーニャ、ケアニン、サーホー、新喜劇王、劇場)
との討論会は、片や天皇主義を唱えて自ら私兵「盾の会」を
創設した「右翼」と、権威主義の大学解体を叫ぶ「左翼」と
の対決かに見えた。しかしその実態は…?
実は僕自身がこの年に一浪で私学に入学した大学生であり、
当時のことは鮮明に記憶している。この時代は誰もが討論に
明け暮れ、それは今の2ch.のような匿名で揚げ足取りに終始
するものではなく、正に対峙しての真剣なものだった。
その討論は飲み屋などでも行って、時には居合わせた年配の
酔客から「若い人が真剣に討論しているのは素晴らしい」と
ビールの差し入れを貰ったりもしたものだ。そんな時代の経
験者の僕には、本作の討論の様子が懐かしかった。
それは今の人には熱く激しい討論に見えるかもしれないが、
それが当時の日常だったのだ。そして互いに意見を戦わせる
ことで友情も生まれたし、その後も信頼し合える仲間を作る
ことができたのだと思う。
そんな思いで本作を観ていると、両者が実は対立ではなく、
共闘を探り合っていたことにも気付かされる。そこに対する
東大側の認識が何処かは不明だが、翌年の三島の自決の後に
東大全共闘はいち早く追悼を表明したものだ。
ただ今にして改めて考えるのは、三島は翌年の行動をしては
いけなかったのではないかという思いだ。本作の中でも「反
米、愛国」の思いは両者に共通していたと語られるが、その
目標のため両者が歩み寄ることはできなかったのか?
もしこの時に歩み寄れていたら、現在の沖縄が米軍に蹂躙さ
れ、政府が「アメリカお追従」を繰り返すような時代は来な
かったと思うし、それを考えると悲しくもなってくる。そん
な歴史の一幕が甦る。
今の時期にこの映像が甦ったことは正しく天啓と思えるもの
だし、三島がこの討論で学生らに本当に伝えたかったことを
改めて考えなくてはいけないとも思った。
公開は3月20日より、東京は日比谷のTOHOシネマズシャンテ
他で全国ロードショウとなる。

この週は他に
『モルエラニの霧の中』
(2014年10月紹介『ハーメルン』などの坪川拓史製作・脚本
・監督・編集・音楽により、監督が現住する北海道室蘭市で
のささやかな物語を7話連作形式で描いた作品。題名はアイ
ヌの言葉で「小さな坂道をおりた所」という意味、室蘭の語
源のひとつだそうだ。そして物語はそんな街で監督が聞き書
きした実話に基づく。そこには少しファンタスティックな話
もあるし、リアルな話も混在する。出演は2つの話に登場す
る大杉漣を始め、大塚寧々、水橋研二、菜葉菜。さらに菅田
俊、草野康太、久保田紗友、小松政夫、坂本長利、香川京子
らが脇を固めている。全体で214分という長尺だが、各話は
長くて40分なので締まってはいる。ただ大杉の演じる写真館
の店主は使っている写真機が古めかしかったり時代設定が不
明で、さらに香川が演じる老婦人と桜の古木や樹木医など、
裏に流れる物語にも興味が湧いた。公開は3月21日より、東
京は岩波ホール他で全国順次ロードショウ。)

『ハーレイ・クィンの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
“Birds of Prey:
And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn”
(2016年8月14日題名紹介『スーサイド・スクワッド』に登
場のヴィラネスを主人公にしたアクション作品。本編の説明
によると元々はバットマンの敵役ジョーカーの恋人だったそ
うだが、その関係が切れて晴れて悪女として覚醒したという
設定。そんな女が悪事を続けて行く中で、ある秘密を持った
少女を本作の敵役ブラックマスクから守るべく、新たな女性
チームが結成される。出演は、製作も手掛ける前作に続いて
のマーゴ・ロビー(この読みが正しい)。相手役にはユアン・
マクレガー。他に2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』
などのメアリー・エリザベス・ウィンステッド、テレビ中心
に活躍するジャーニー・スモレット=ベル、子役のエラ・ジ
ェイ・バスコらが脇を固めている。脚本は2019年『バンブル
ビー』を手掛けたクリスティーナ・ホドスン。監督は2018年

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02月16日(日)
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