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On the Production
by 井口健二
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■ひとくず、AI崩壊(眉村ちあきのすべて(仮)、スキャンダル、どこに出しても恥ずかしい人、人間の時間、地獄の黙示録ファイナルC、1917)
公開は、3月14日より東京は渋谷ユーロスペース、3月28日
より愛知は名古屋シネマスコーレ、4月17日より大阪はテア
トル梅田にての上映が決定している。
『AI崩壊』
2016年1月紹介『太陽』や2017年4月2日題名紹介『22年目
の告白 私が殺人犯です』などの入江悠脚本/監督による近
未来が背景のサスペンス作品。
主人公は地方の大学で医療用AIの開発を行っていた研究者。
しかし病歴などを全て取り込んで個々の患者に合わせた医薬
を製造するという研究は厚労省の認可が下りず、病魔に侵さ
れた妻を救うことができなかった。そして彼は研究を離れ、
幼い娘と共に海外に移住していたが…。
その後の国内では彼の研究成果が認められて、妻の弟が運営
する会社では厚労省の認可の許に医療AI「のぞみ」を開発。
それは年齢、年収、家族構成、病歴、犯罪歴などの全国民の
個人データと健康を管理し、もはや国民の生活から切り離す
ことのできないインフラとなっていた。
そして主人公にはその功績を称える総理大臣顕彰が決まり、
娘の意見もあって帰国することになる。ところが彼と娘が新
設された本部の見学を終えて式典会場に向おうとしたとき、
突如「のぞみ」が暴走。医療器具の変調が人々を危機に陥れ
る。そしてその暴走の首謀者が主人公と断定される。
出演は、大沢たかお、賀来賢人、松嶋菜々子、三浦友和、広
瀬アリス、岩田剛典、高嶋政宏、芦名星、玉城ティナ、余貴
美子、野間口徹、マギー、黒田大輔、毎熊克哉、MEGUMI、螢
雪次朗、川瀬陽太。現時点ではベストと言える布陣が揃う。
背景が2030年ということで、一応SFの範疇と呼べる作品と
思うが、内容はScience Fiction というよりscience factの
羅列で、SFで言うところのsense of wonder には物足りな
い作品になってしまった。
もちろんこれは僕がSFの立場から言っているもので、サス
ペンスやアクションの点では問題のないものだが…。もしか
すると監督は取材した間に出会った研究者や科学者の意見に
引っ張られ過ぎてしまったのかな。
入江監督に関しては上記の『太陽』に関してもSFのセンス
は充分にある人と思うが、現実の科学者が思い付く程度の話
ではSFにはならない。そこからのさらなる飛躍が重要なの
だ。その点での読み違いを感じてしまった。
それは、例えば抗議団が掲げるディジタルの横断幕などには
センスを感じるし、その後のヴィジュアルが物語に係ってく
る辺りは嬉しくもなったが、もっとこのようなギミックが物
語の本筋に鏤められていて欲しくもあった。
それはヴィジュアルだけでなく物語の展開においてもだが。
小型ドローンはもはや現実のものだという観点に立っての、
本格的なSFを描いて貰いたいと思ったものだ。
公開は1月31日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他にて全国
ロードショウとなる。なお新宿ピカデリー他の一部劇場では
2月16日、17日に日本語字幕版での上映も予定されている。
この週は他に
『眉村ちあきのすべて(仮)』
(1996年生まれで2015年にアイドルグループの一員としてデ
ビュー。2016年からソロで活動しているという自称「弾き語
りトラックメイカーアイドル」を追ったドキュメンタリー。
作品ではパソコンでトラックを制作している様子やプロモー
ションイヴェントへの出演。さらにライヴの模様やその他の
活動などが綴られるが…。実は自分の専門分野でこの後も紹
介したかったが、ネタバレを避けて欲しいという要望なので
それは書かない。ただこの設定でこういう話を書けるという
のは、これから先に期待したくなる作家性を感じた。監督は
2003年に李相日監督『BORDER LINE』の共同脚本を担当した
松浦本。眉村のPVなど手掛けての長編デビュー作。因に本
作は2019年6月9日題名紹介『暁闇』と同様「MOOSIC LAB」
で2019年に出品され、観客賞、審査員特別賞、ベストミュー
ジシャン賞、女優賞の4冠に輝いた。公開は4月4日より、
東京は渋谷のホワイトシネクイントでレイトショー。)
『スキャンダル』“Bombshell”
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01月12日(日)
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