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On the Production
by 井口健二
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■虹色の朝、シライサン(オルジャス、シュヴァルの理想宮、シティーH、エンド・オブ・S、アニエス/ヴァルダ、ある女優の、ドルフィン・M)
で男性の兄と、女性の死の瞬間に現場に居合わせた女友達が
その温泉宿を訪ねるが…。
その宿で3人と配達に来ていた酒屋の店員が怪談話に興じて
いたことが判明し、それによって呪われた可能性が浮上して
くる。そこに事件を嗅ぎ付けた雑誌記者も現れ、呪いへの挑
戦が開始される。
出演は、2019年7月紹介『いなくなれ、群青』などの飯豊ま
りえと、2018年6月紹介『私の人生なのに』などの稲葉友。
他に忍成修吾、谷村美月、染谷将太、諏訪太朗。さらに江野
沢愛美、渡辺佑太朗、仁村紗和、大江晋平らの若手が脇を固
めている。
なお安達監督は学生時代から多くの短編映像作品を手掛けて
おり、本作は正に満を持しての長編デビュー。因に染谷将太
はその短編作品の1本に出演していたそうだ。
また本作の特殊メイク・スーパーヴァイザーとして、2018年
1月28日題名紹介『おみおくり』などのベテラン・江川悦子
が参加しているのも注目したいところだ。
脚本も手掛ける安達監督は『リング』『呪怨』との差別化に
かなり腐心したようで、登場する怨霊の「シライサン」には
いろいろなルールが設けられている。そのルールの構築はあ
る種の科学的、論理的で、乙一ワールドの感じがする。
それに対する主人公たちが、乙一の原作では上記の紹介記事
にも書いたように極めて頭が良くて、明確な対処法も見つけ
てしまうのだが…。その実行に苦慮する辺りも乙一らしさと
言うか、見事な展開になっている。
そして他方「シライサン」側も、これは巧みな手法で攻めて
きて、その対処法との攻防が見どころになると同時に感動の
シーンにもなっている。これも本作の作劇の面白さと言える
ものだろう。
そして事件の解決となる結末は、他のジャンルの作品でも観
られる結末でありながら、本作においては正に究極の解決策
と言えるもので、このシチュエーションのみで成立する秀逸
な結末になっている。
さらに様々な作品へのオマージュとも思える見事なショック
シーンも挿入され、ホラー映画をマニアックに研究し尽くし
た成果とも言える作品だ。
公開は2020年1月10日より、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『オルジャスの白い馬』
         “The Horse Thieves. Roads of Time”
(中央アジアの草原を舞台にした日本・カザフスタン合作映
画。ソ連崩壊後の1990年代。馬の群れを飼育していた父親が
馬を売りに出掛けたまま帰宅しない。その売り上げは一家の
独立資金になるはずだった。そして一家には少し複雑な事情
があるようだ。そんな一家の許に1人の男が現れ、一家の長
男との交流が始まる。やがて親戚の家に身を寄せるため、男
と共に移動を開始した一家は…。出演は森山未來と、カンヌ
国際映画祭で最優秀女優賞受賞のサマル・エスリャーモバ。
それに少年役のマディ・メナイダロフ。脚本と監督は、日本
の竹葉リサと、2011年10月31日付「東京国際映画祭(2)」
で紹介『春、一番最初に降る雨』のエルラン・ヌルムハンベ
トフが共同で手掛けた。因に物語は現地の実話に基づくが、
大元の企画は竹葉のもののようだ。公開は東京国際映画祭で
上映の後、2020年1月18日より、東京は新宿シネマカリテ他
で全国ロードショウ。)

『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』
      “L'incroyable histoire du facteur Cheval”
(フランス南東部オートリーヴ村に実在する手作りの宮殿。
その誕生までの秘話を描いたドラマ作品。主人公は22歳で結
婚し、最初の子は1歳で死去、第二子を授かり、郵便配達員
として働き始める。しかし妻が亡くなり、子供は親戚の許に
預けられる。その後に再婚して娘が誕生。その頃ふと手にし
た石のインスピレーションから、絵葉書の写真を基に宮殿を
作り始める。それは村人には変人扱いされるが、娘は理解者
だった。その宮殿は33年の歳月を掛けて完成し、現在ではフ
ランス政府により重要建造物にも指定されている。そんな建
設に纏わる悲しくも美しい物語だ。監督は、2014年6月15日

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10月13日(日)
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