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On the Production
by 井口健二
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■工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男(アートのお値段、柴公園、トム・オブ・フィンランド、CROSSING、さらば愛しきアウトロ-)
『アートのお値段』“The Price of Everything”
(オークションで高値に取引される現代アートの実態に迫る
ドキュメンタリー。それは高値を招来したオークショナーか
ら美術評論家、コレクター、そしてアーティスト本人まで、
各階層の人物へのインタビューで構成された作品だ。正直に
言って希少性の高い歴史的な芸術品が高値を呼ぶのは理解す
るが、作者も存命中の現代アートが斯くも高値で取引される
のは謎だった。その疑問に本作は明確に答えてくれる。その
答えについては本作を見ていただきたいが、それに対する疑
問なども呈されており、極めて判り易い作品だと言える。特
に芸術品がコレクターに私蔵されることへの危惧に対して、
美術館の倉庫に死蔵されるよりはましと言う論点には納得で
きるものもあった。そんな中で全編を通して繰り返し登場す
る初老のコレクターの行動には共感できるものもあり、それ
らが観ていて気持ち良い作品でもあった。公開は8月より、
東京は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『柴公園』
(過去にも2013年12月『猫侍』などを紹介しているローカル
TVで放送されているシリーズの劇場版。下町に新築された
タワーマンションに引っ越してきたいずれも柴犬を飼ってい
る3人の中年男が公園で出会い、世間話を続ける内にいろい
ろな事件が起きてくる。出演は渋川清彦、大西信満、ドロン
ズ石本と桜井ユキ。他にBOYS AND MENの水野勝、松本若菜、
寺田農、山下真司。さらに2009年5月紹介『幼獣マメシバ』
の佐藤二朗が同じ役で登場する。監督は2018年4月22日題名
紹介『ゼニガタ』などの綾部真弥。脚本も『ゼニガタ』など
の永森裕二が担当。他愛ない話ではあるが、後半のシーンに
関しては、実は僕自身が近所の人たちと一緒に工事の始まる
前の更地に潜り込んでドッグラン的に楽しんでいた経験があ
り、そんなことを懐かしく思い出したりもした。案外あるあ
るの詰まった作品でもあったものだ。公開は6月14日より、
全国のイオンシネマ系列でロードショウ。)
『トム・オブ・フィンランド』“Tom of Finland”
(同時期に『指輪物語』の原作者を描く“Tolkien”も公開
されるドメ・カルコスキ監督が、ゲイアートの原点とされる
フィンランド人画家の半生を描いたドラマ作品。第2次大戦
中にナチスの支援を受けたフィンランド軍に出征したトウコ
・ラークソネンは、終戦で帰還したものの自室に閉じ籠り、
戦地で出会った逞しい男たちの姿を描き続ける。実は当時の
母国では同性愛が法律で禁じられており、彼の性癖は夜の公
園で取り締まりに怯えながら相手を探すか、自室でファンタ
シーを膨らませるしかなかったのだ。ところがそんな兄の様
子を見かねた妹が、彼を広告業界に推薦したことから転機が
訪れる。彼は広告アートで才能を発揮し、同時に流行りのバ
イカーファッションなども取り入れて自作を進化させる。そ
してアメリカの雑誌に送った絵が表紙に採用され…。文化的
に興味深い作品だ。公開は8月2日より、東京はヒューマン
トラストシネマ渋谷他で全国順次ロードショウ。)
『CROSSING PartT』“太平輪:亂世浮生 The Crossing”
『CROSSING PartU』“太平輪:驚濤摯愛 The Crossing 2”
(ジョン・ウーが2008年8月紹介『レッドクリフ』の後編作
(09年)以来の単独監督を務め、2014、15年に本国公開された
2部作の歴史ロマン。1949年発生の海難事故をクライマック
スとして、1945年の日中戦争末期から国共内紛の中国激動の
時代を背景に、そこに関った3組の男女を描く。1組目は国
民軍将校とその妻。2組目は台湾人だが日本軍に徴用された
医師と日本人の恋人。3組目は国民軍兵士の夫を探す妻と、
彼女と偽装結婚した別の兵士。彼らの人生が中国版タイタニ
ックとも呼ばれる太平輪号で絡み合う。出演はホアン・シャ
オミンとソン・ヘギョ、金城武と長澤まさみ、そしてチャン
・ツィイーとトン・ダーウェイ。正に人気、実力を兼ね備え
た配役が共演している。前編129分、後編126分の大作だが、
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05月19日(日)
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