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On the Production
by 井口健二
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■ROMA ローマ、麻雀放浪記2020
の面だけから言えば6.5Kで充分に70mmのフィルムに匹敵する
ことは理解できる。
なおALEXA 65という名称に関しては、70mm映画の初期に使用
されて『ベン・ハー』などに採用されたMGMカメラ65など
も思い出され、映画ファン的には懐かしさがこみ上げてくる
ものだ。
ついでにこのカメラの仕様を記しておくと撮像素子のサイズ
は54.12×25.59mmで、これは70mmフィルムの52.5×23.0oよ
り大きいものになっている。ただしこの場合の横:縦の比率
は2.11:1で、70mmフィルムの2.20:1より縦に大きい。
そこで上映用の70mmフィルムへのプリントでは上下を切って
いるものだが、さらにアメリカのデータベースでは 2.39:1
という記載もあって、これがディジタル上映での比率、且つ
監督が意図した比率になっているようだ。
僕自身は特別な事情がない限り、テレビモニター上で映画を
観る趣味は持たないので、 Netflixで配信された映像がどの
ようなものであったかは知らないが、本作は充分に映画館で
見る価値のある作品に思えるものだった。

『麻雀放浪記2020』
1978年度直木賞作家の色川武大が1969年に阿佐田哲也名義で
発表した小説の映画化。同作からは1984年に和田誠監督によ
る映画化もあったが、同作の大ファンだという俳優の斎藤工
が熱望してリメイクが実現したとのことだ。
因にこの作品に関しては、通常は試写のスケジュールが記載
される部分が空欄になった「マスコミ試写は行わない」旨の
案内状が届いたものだ。
映画の発端は第2次大戦直後の東京の闇市。そこには1940年
に開催予定だった東京五輪が、戦争のため中止されたという
状況もある。
物語は、そんな時代に玄人雀士だった「坊や哲」が「五筒」
を握りしめたまま、突然2020年にタイムスリップするところ
から始まる。そこは開催予定だった東京オリンピックが戦争
のため中止されたという世界でもあった。
そんな世界に突如放り込まれた主人公は、時代錯誤の行動も
行うが、やがてオリンピックの代替で麻雀競技会が行われる
ことを知り、それに挑戦することになる。しかしその相手は
AI搭載のサイボーグ雀士だった。
一方、主人公がタイムスリップした原因は、「九蓮宝燈」を
上がったことが切っ掛けと考えられ、主人公は過去に戻るた
めに再びその役満を上がるべく、決勝戦の勝負に挑むことに
なるが…。
出演は、坊や哲役に斎藤工。共演に姉妹音楽ユニット「チャ
ラン・ポ・ランタン」のもも。さらにベッキー、的場浩司、
ピエール瀧、伊武雅刀、矢島健一、吉澤健、堀内正美、小松
政夫、竹中直人らが脇を固めている。
脚本と監督は2019年4月21日題名紹介『凪待ち』などの白石
和彌。なお脚本は2017年7月9日題名紹介『蠱毒(こどく)』
などの佐藤佐吉、2017年1月紹介『3月のライオン』などの
渡部亮平との共同になっている。
タイムスリップした主人公が過去から持ってきた「五筒」を
オリンピックの「五輪」に引っ掛ける辺りはニヤリとした。
そこにAI搭載のサイボーグとくればSFファンには興味の
惹かれるところだ。
ただ「五筒」と「五輪」の関係にはもう少し何かがあっても
良かったのではないかな。将来的には競技種目の噂もある麻
雀なので、その辺の捻りも欲しかった。まあオリンピックを
前面に出すといろいろ揉めたのかもしれないが。
一方、麻雀ファンにはどうなのかな。いろいろイカサマの手
口を見せる辺りはオリジナルも同じだったと思うが、その仕
込みが、最初は符牒だったのが後半はテレパシーというのは
SFファンとしても納得ができない。
ここはもっと心理戦のような、阿吽の呼吸みたいな表現も欲
しかったところだ。麻雀を今時という意見もあるが、2016年
12月18日題名紹介『咲-saki-』では麻雀の描き方もしっかり
していたもので、それくらいの作品にはして欲しかった。
いろいろとトラブルの多い作品にはなってしまったが、SF
テーマの部分は悪いとは思わなかったので、これからも頑張
って欲しいところだ。

05月06日(月)
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