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On the Production
by 井口健二
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■シャザム!(柄本家のゴドー、鷺娘、旅の終わり、小さな恋、兄消え、ばあばは、主戦場、あの日々の話、武蔵、スケート・K、誰もがそれを)
「思春期の幻想」という原作のコンセプトも生かしており、
観ていて気持ちよく楽しめた。また敵が繰り出す怪物の造形
にはハリーハウゼン的な趣もあって、これも好ましく感じら
れたものだ。
DCユニヴァースの一員という立場は採っているようだが、
出来たらこのままの愛らしさで続編も期待したい。
公開は4月19日より、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『柄本家のゴドー』
(柄本佑、時生の兄弟が、父・柄本明の演出でサミュエル・
ベケットの不条理劇に挑む様子を描いたドキュメンタリー。
兄の佑は13歳の時に父親と石橋蓮司が演じた『ゴドーを待ち
ながら』を観て演劇を志したそうだ。その芝居に2014年から
弟の時生と2人で挑戦。そして2017年の再演の演出に父親を
招く。その稽古場では、初日の立ち稽古から父親の笑い声が
響く。それには怪訝な表情を見せる佑だったが…。3人それ
ぞれの演劇に対する想いが語られる。それは特に劇団・東京
乾電池の代表を務める父親から、この舞台の座長である佑へ
の演技指導に表れるが、そこには禅問答のような特異な雰囲
気も漂う。それが不条理劇という特別な演劇空間も描いてい
るようで興味深かった。さらに父親と石橋による『ゴドー』
の記録映像も挿入され、上映時間は64分だが、いろいろな要
素がぎっしり詰まった作品だ。公開は4月20日より、東京は
渋谷ユーロスペースでロードショウ。)

『シネマ歌舞伎・鷺娘/日高川入相花王』
(2006年、シネマ歌舞伎の第2弾として上映された作品が、
サウンドリマスターにより再公開される。舞踊の2本立ては
前半が『日高川』。『道成寺』でお馴染みの安珍清姫の物語
で、僧侶の後を追い寺に向かう途中の川の渡し場の場面が、
人形振りで舞われる。そして後半は、1984年メトロポリタン
歌劇場100周年記念ガラで世界を魅了した坂東玉三郎の舞。
重い鬘や早変わりのために重ねた衣装の重さで、2009年の公
演を最後に玉三郎自身が体力的に全編を舞うのは無理とする
伝説の舞台が、2005年の歌舞伎座公演から登場する。それに
しても引き抜きで行われる早変わり見事さや玉三郎の舞いも
美しいが、特に後半の深々と降り続く雪の様子はこれはもう
ため息が出るほど素晴らしい。その中で舞う玉三郎に姿には
正に魅了されるという言葉しかなかった。公開は6月20日か
ら7月4日まで、東京は築地東劇他の全国の映画館で2週間
限定ロードショウ。)

『旅の終わり世界のはじまり』
(2017年7月23日題名紹介『散歩する侵略者』などの黒沢清
監督が、文化庁の平成30年度「国際共同製作映画支援事業」
から2605万円の助成を受けウズベキスタン共和国と共同製作
した作品。旅番組の女性レポーターを主人公に異文化の交流
を描く。主演は前田敦子。その脇を染谷将太、加瀬亮、柄本
時生らが固めている。国交樹立25周年と、劇中にも登場する
オペラハウス・ナヴォイ劇場の完成70周年記念映画とされて
いるもので、その劇場の完成には第2次大戦後にソ連に抑留
されていた多くの日本人が動員されたのだそうだ。そんな素
晴らしい劇場も登場する作品だが、残念なことにその情報が
紹介されるのは主人公がそこを訪れるシーンが終った後で、
事前に知っていたらじっくりその映像を楽しみたかった、と
いう気分にはなった。もう一度観ろということなのかもしれ
ないが…。公開は6月14日より、東京はテアトル新宿、渋谷
ユーロスペース他で全国ロードショウ。)

『小さな恋のうた』
(沖縄出身のバンド「MONGOL800」の楽曲を主題に描く青春
ドラマ。物語の中心は沖縄の高校の学内ロックバンド。学園
祭でのライヴが当面の目標だが、ライヴハウスでの練習姿が
ネットに上って注目を集めた矢先、ギター担当で作曲も手掛
けていたメムバーが米兵による轢き逃げで死亡。夢は潰え、
同時に反基地運動の熱も上がる。しかし彼は基地に暮らす少
女とフェンス越しの交流も深めていた。そして彼の妹が兄の
遺した曲を見付けるが…。出演は佐野勇斗、森永悠希、山田

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03月31日(日)
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