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On the Production
by 井口健二
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■がんと生きる 言葉の処方箋(エリカ38、最果てリストランテ、僕たちのラストS、ギターはもう聞こえない/救いの接吻、スノー・ロワイヤル)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『がんと生きる 言葉の処方箋』
順天堂大学医学部・樋野興夫教授が提唱する「がん哲学外来
(Cancer Philosophy Clinic)」と、それに呼応して全国で開
催されている「メディカル・カフェ(Medical Cafe)」につい
て描いたドキュメンタリー。
人の病気である「がん」と「哲学」がどう繋がるのか、映画
の観始めでは少し戸惑いを感じたが、結局「哲学とは人の生
き方を考える」ものであり、「がんになった自分がどう生き
るか」を考えることだと理解した。
そこで樋野教授の「がん哲学外来」では、「言葉の処方箋」
と称する様々な言葉の中から、患者の悩みに沿うような言葉
を投げかけ、それによって患者自らが生きる道を見出すよう
な導きを行う。
それはある種の宗教のようにも見えるが、そこに神の介在は
なく、全てが人間の行動として成されるものになっている。
つまりこれは科学であり、技術として語ることのできるもの
だ。そんな「がん哲学外来」の実像が描かれる。
そしてそんな「がん哲学外来」によって生きる道を見出した
患者が、今度はその考えを広める「メディカル・カフェ」を
開催する。そこでは患者同士が語り合うことで、それぞれの
患者が生きる道を見出す仕組みが出来上がっている。
実際にこの仕組みによって、余命を告げられた患者がそれ以
上に生き長らえてもいるようだが、そこでは「余命というの
は確率だから、それ以上に生きても不思議はない」ともされ
ているものだ。
すなわち一方では余命通りに死ぬ患者もいるが、その中で生
きる道を見出すことで、患者自らの努力も含めて生き長らえ
る道が開かれる。そんな「がんと共に生きる」道筋の描かれ
た作品になっている。
同種の作品では、先に2018年12月23日題名紹介『がんになる
前に知っておくこと』を掲載しているが、その作品では病気
を商売にしているあざとさのようなものも感じられ、病気に
対する思いが感じられなかった。
それに対して本作では「がん」に対峙する本気が感じられ、
それは登場する「カフェ」を運営する患者の思いとも重なっ
て、すがすがしくも感じられた。それが「がんも病気も単な
る個性である」とする樋野教授の言葉に繋がる。
なお映画の中では、さらに多くの「言葉の処方箋」も紹介さ
れている。それらの中には患者だけでなく、患者の遺族に向
けられた言葉も含まれる。それによって遺族も前向きに生き
て行けるものだ。
ただ僕は映画を観ていて、この理論が「がん」だけでなく、
他の難病にも通じるのではないかとも考えた。「がん」以外
にも様々な症状に苦しむ難病患者は存在しており、そんな患
者にもこの理論を広めて欲しいとも思ったものだ。
監督は2008年『マリアのへそ』などの野澤和之。自ら大腸が
んを克服しての渾身の作品だそうだ。
公開は5月3日より、東京では新宿武蔵野館にてモーニング
ショウ。上映期間中は樋野教授や監督、出演者によるトーク
ショウなどいろいろなイヴェントも予定されている。
より多くの人に観て貰いたい作品だ。

この週は他に
『エリカ38』
(2018年9月に他界した樹木希林が生前、自身初となる企画
を手掛けた作品。共に芸能界を歩んできた浅田美代子を主演
に迎え、60歳を過ぎても38歳と見紛う色香で男を騙し、最後
は異国の地で逮捕された女詐欺師の姿を、実話を基に描く。
エリカと名告るその女は、自称外交官という男の指示の許、
支援事業説明会と称して人を募り、架空の投資話で大金を集

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03月24日(日)
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