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On the Production
by 井口健二
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■パペット大騒査線(漂うがごとく、私の20世紀、ぼくの好きな、ジ・アリンズ、少年たち、ザ・プレイス、Be with You、セメント、ワイルドT)
ハノイでタクシー運転手の男性と通訳兼観光ガイドの女性の
新婚カップルを主人公に若い男女の暮らしぶりが描かれる。
2人は出会って3ヶ月で結婚するが、結婚式で酔い潰れた新
郎は初夜もままならない。そんな新婦は式に来られなかった
友人を訪ね、友人に頼まれた手紙を届けに行った先の男性に
襲われる。その場は逃れた彼女だったが、その男性と徐々に
逢瀬を過ごすようになり…。フランス映画人の支援を受けて
いるそうだが、映像や音響にも高い芸術性を感じる作品で、
内容もこれが社会主義国の映画かと思うほどのものだった。
また特に後半に流れる音楽が不思議な雰囲気を漂わせて僕に
は印象的に感じられた。監督は非営利団体「ベトナム映画発
展支援センター」を運営するブイ・タク・チュエン。脚本は
同センター卒業生のファン・ダン・ジー。公開は3月23日よ
り、東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)

『私の20世紀』“Az én XX. századom”
(2018年1月28日題名紹介『心と体と』でベルリン金熊賞受
賞のイルディコ・エニュディ監督による1989年デビュー作。
1880年、トーマス・エジソンによる白熱電球の発明と同じ年
に生まれた双子の女児が孤児となり、クリスマスの夜に別々
の家庭に引き取られ、1人は結婚詐欺師、もう1人は革命家
に育つ。そんな2人がオリエント急行に偶然乗り合わせ、ブ
ダペストで下車した2人を1人の男性が見初める。その男性
は彼女らを1人と思い込み…。出演は、現在は母国の国立演
劇アカデミーで学長を務めているというドロタ・セグダと、
1975年のタルコフスキー監督『鏡』などのオレーグ・ヤンコ
フスキー。エジソンに対してニコラ・テスラも登場するなど
科学的な思い入れも感じられる作品で、上記の受賞作同様、
ファンタシーではないけど、ちょっとメルヘンでファンタス
ティックな雰囲気も漂う。公開は3月30日より、東京は新宿
シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)

『ぼくの好きな先生』
(山形県にある東北芸術工科大学で教鞭を執りながら、日本
中を駆け巡って創作活動を続けている画家・瀬島匠を追った
ドキュメンタリー。その作品は、ブリキをキャンバス状に成
型して絵具を塗りたくったり、あるいは浜辺にキャンバスを
立てて描いたり、さらに車の中を画廊にして飾ったり、まあ
破天荒という言葉が当て嵌まりそうな行動力だ。そして描か
れる絵は30年間に亙って全てRUNNERと題されている。そんな
画家は、成功した商業画家を父親に持ち、パリなどへの留学
経験はあるものの、特に絵画を学んだ訳ではない。それでも
大学の学生には「もっと自由に生きていいんだよ」「失敗を
恐れずに楽しもうよ」などとエールを贈り、それは聞いてい
るだけで、生徒には良い先生だろうと思わせるものだが…。
光には影もある。監督は、2018年12月2日題名紹介『こんな
夜更けにバナナかよ』などの前田哲。公開は3月23日より、
東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)

『ジ・アリンズ 愛すべき最高の家族』“The Allins”
(舞台上で排泄したり、汚物をばら撒くなど過激なパフォー
マンスで物議を醸したパンクバンドThe Murder Junkiesの元
ヴォーカルで、1993年に薬物の過剰摂取により36歳で夭逝し
たGGアリンの姿を、アーカイヴの映像と弟の遺志を継いで
今も活動を続ける兄マーク及び母親へのインタヴューなどで
綴ったドキュメンタリー。兄弟と母親は反社会的な父親と共
に水も電気もない山奥で暮らしていたが、虐待に耐えかねて
脱出、しかし兄弟は中学時代からドラッグの販売や窃盗など
に手を染める。そんな中からGGは音楽活動を開始、才能を
開花させて行くが…。ドラッグへの依存は収まらず、毎年の
ように刑務所に入れられる。それでも母親は優しい目で見つ
め続ける。それは彼の真の姿がそうではないと知っていたか
らだ。監督は、2003年『メイキング・オブ・ドッグヴィル』
などのサミ・サイフ。公開は2月23日より、東京は渋谷シア

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01月27日(日)
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