ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459698hit]

■山(モンテ)、チャンブラにて(道草、シスターフッド、空の瞳とカタツムリ、翔んで埼玉、芳華、ヒトラーVS.ピカソ、L♡DK)
生業は窃盗しかないというのが現実の姿のようだ。そんなロ
マの一家で14歳の少年が本作の主人公だ。
主人公の名前はピオ。彼は祖父母と両親、さらに兄弟や甥姪
たちの大家族の中で暮らしている。そんな少年はすでに酒や
たばこも口にしているが、家族の中ではまだ大人とはみなさ
れていない。
ところが父親と兄が警察に捕まり、少年の肩に一家の支えの
任が覆いかぶさってくる。そんな中で少年はアフリカからの
難民の青年などと交流を持ち、彼の助けも得て何とか家族を
支えて行こうとするが…。
少年の行動が兄たちの逆鱗に触れ、さらに祖父の死で釈放に
なった兄からある究極の選択を迫られることになる。
主人公を演じているのは役名と同じ名前の少年で、実は彼の
両親や兄弟を演じているのも役名と同じ、さらに苗字も同じ
という人たち。つまり彼らは実の家族で、そんなロマの一家
がそのまま出演しているものだ。
因に監督は、2014年にも同じ主人公の短編でカンヌの受賞を
果たしている。
物語では追い込まれた主人公の前に謎めいた人物が現れるな
どファンタスティックな展開もあるが、それは古き良き(?)
時代への郷愁にもなっている。しかし現実の描写はそれを上
書きするように厳しいものだ。
そんな切実なロマの人たちの境遇が克明に描かれた作品とな
っている。ロマ=ジプシーに関心のある人には是非とも見て
貰いたい作品だ。
公開は、1月26日より東京は新宿武蔵野館でロードショウ。
また東海地区では名古屋の名演小劇場にて3月9日より上映
となる。

この週は他に
『道草』
(2009年8月紹介『犬と猫と人間と』飯田基晴監督の製作指
揮による続編『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災』で商業
デビューした宍戸大裕監督が、重度の知的・精神障害の人々
の日常を追ったドキュメンタリー。2014年の制度改正によっ
て重度の障害者にも介護者付きのひとり暮らしが可能になっ
た。本作ではそんな形でひとり暮らしをしている3人の障害
者の生活がユーモラス且つシビアに紹介される。実は映画の
中心は東京都練馬区のNPOで、僕は同じ区に住んでいてこ
の活動を全く知らなかったのだが。介護者との散歩の途中で
道草を食う(文字通り途中で摘んだツツジの花を食べる)など
微笑ましい描写もある反面、突然奇矯な態度にも出るなど予
測の付かない行動が、優しく温かい目で撮影されている。そ
してそれらの総てに対処する介護者の献身ぶりには、全く頭
の下がる思いもする作品だった。公開は2月23日より、東京
は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)

『シスターフッド』
(2017年7月2日題名紹介『もうろうをいきる』などの西原
孝至監督が、ドキュメンタリーとドラマを混在させる手法で
若い女性の生き様を描いた作品。登場するのはヌードモデル
の兎丸愛美と独立レーベルで活動を続ける歌手のBOMI。2人
がドキュメンタリー監督の次回作に向けた資料映像用のイン
タヴュー取材に応じる形式で彼女たちの現実が語られる。そ
の一方で監督自身のドラマが展開される。この監督の姿には
西原監督自身が反映されているのかもしれないが…。正直に
言ってこのドラマで何が言いたいのか判らなかった。ドラマ
の途中にインタヴューを挟む手法が斬新とも思えないし、何
よりドキュメンタリーとドラマの間にメリハリがないから、
これではドキュメンタリーの部分も作り物に見えてしまう。
それは本作の中で真実を語っている人たちに失礼なようにも
感じられた。それが壮絶なだけに…。公開は3月1日より、
東京はアップリンク渋谷他で全国順次ロードショウ。)

『空の瞳とカタツムリ』
(故相米慎二監督が遺した映画タイトル案から着想されたと
いう作品。虚無感から誰とでも寝るが一度寝た男とは二度と
寝ないという女と、極度の潔癖症で性を拒絶する女。そんな
2人と大学時代から長く付き合っている男。男は虚無感を抱
える女への思いを捨て切れずにいるが…。微妙なバランスの
中で過ごしてきた男女3人の関係が少しずつ崩れて行く。そ

[5]続きを読む

01月20日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る