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On the Production
by 井口健二
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■ふたつの昨日、世界一/映画館、メアリーの(ポリスS、ジュリアン、春待つ、ファースト、めんたい、輪違屋、LOVEHO、かぞくいろ、バハール)
れる酒田大火の火元とされ、火災後には映画館が再建される
こともなく、関係者の口から語られることも無くなってしま
う。
この心情を語るかのように本作では、まず先に酒田大火の惨
状が描かれ、当時のニュース映像など、海からの強風にあお
られた火災の恐ろしさが克明に伝えられる。それは火元であ
る映画館を罰するかのような描き方だ。
しかしそれでも在りし日の映画館を思う人たちがいて、その
人たちと映画館との関わりが綴られて行く。それは今まで語
ることを憚っていた人たちが、この作品に思いの丈をぶつけ
るかのような愛情に満ち溢れたものだ。
その中には、20歳で映画館の経営を任されて「グリーン・ハ
ウス」のスタイルを築いた故佐藤久一氏の所縁の人や、元映
画館の従業員。その一方で同館で『タワリング・インフェル
ノ』を2回観て大火の消火に当った消防士など…。
僕自身、山形市には何度か行って、そこにあるフォーラム山
形は好きな映画館だ。それは大手のシネコンではなく地元の
映画愛好家が立ち上げた映画館と言われ、それが今では東北
各地に展開するチェーンにまで広がっている。
自分は東京にいて映画は何でも観られる環境だが、地方の映
画愛好家が丹精込めて映画を観る環境を作り上げている。そ
んな気持ちがフォーラム山形に行くと感じられるし、そんな
人たちの原点がここにあるような感じもする作品だった。
山形国際ドキュメンタリー映画祭の企画・制作で、監督・構
成・撮影は、1977年生まれ山形県出身の佐藤広一。ナレーシ
ョンを、2018年2月に急逝した2018年7月紹介『教誨師』な
どの大杉漣が担当している。
公開は2019年1月5日より、東京は有楽町スバル座他で全国
順次ロードショウとなる。
映画館を愛する人、必見の作品だ。
『メアリーの総て』“Mary Shelley”
『フランケンシュタイン』の作者として知られるメアリー・
シェリーの姿をエル・ファニングが演じるドラマ作品。
メアリーは1797年8月30日、女権運動家の母親メアリー・ウ
ルストンクラフトと、急進的な政治学者の父親ウィリアム・
ゴドウィンとの間に誕生した。しかし母親は産褥熱で他界。
偉大な人を自分の誕生で失ったという思いが彼女に残る。
やがて父親は再婚し、再婚相手の連れ子で歳の近い義妹とは
仲良くなるが、義母とは折り合いが悪く、そのため父親はメ
アリーを知人の家に預ける。ところがそこで開かれた読書会
で、メアリーは詩人のシェリーと巡り会う。
その詩人とメアリーは恋に落ちるが、詩人には妻子があり、
父親には家名に泥を塗ったと勘当されてしまう。それでも駆
け落ちして第1子を生むが、詩人が借金取りに追われる日々
の中で子供は死去。これも彼女の心に傷を残す。
そんな中でメアリーは、詩人と共にルイージ・ガルヴァーニ
の研究に基づく「死者を甦らせる」生体電気の実験ショウを
見学。死んだカエルの足が電気を流すとピクピクと動く様子
に感銘を受ける。
一方、義妹は放蕩者のバイロン卿と付き合っており、彼女の
誘いでスイスの別荘に招かれたメアリーと詩人は、酒を飲み
芸術論などを戦わせる中で、ある嵐の夜、バイロン卿から各
自で怖い話を作ろうと提案されるが…。
脚本と監督は、2012年に長編デビュー作の『少女は自転車に
のって』が数多くの賞に輝いたサウジアラビア出身のハイフ
ァ・アル=マンスール。イスラム圏初の女性映画監督と言わ
れる俊英の長編第2作だ。
なお脚本は、オーストラリア出身の脚本家エマ・ジェンセン
のオリジナルに基づいている。
共演は、2015年3月紹介『ジュピター』などのダグラス・ブ
ースと、2008年2月紹介『美しすぎる母』などのスティーヴ
ン・ディレイン。さらに2016年英国アカデミー賞ライジング
・スター賞受賞のベル・パウリー。
また、2018年10月28日題名紹介『ボヘミアン・ラプソディ』
でロジャー・テイラー役のベン・ハーディが、本作では『吸
血鬼』の作者ポリドリを演じている。
メアリー・シェリーが『フランケンシュタイン』の原作者で
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11月11日(日)
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