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On the Production
by 井口健二
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■描きたい、が止まらない(トラさん、revisions、マイ・ジェネ、赤い雪、サイバー、あの日のオルガン、jam、喜望峰、マチルド、家へ帰ろう)
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『描きたい、が止まらない』
滋賀県東近江市在住で高機能自閉症と診断されている画家・
古久保憲満さんを追ったドキュメンタリー。
古久保さんは1995年生まれで、3歳ごろから絵を描き始める
が、小学校1年生の終わりに発達障害と診断され、2007年に
養護学校に入学。そこでも模造紙やカレンダーの裏などに絵
を描き続け、用紙が足りなくなるとセロハンテープでつぎ足
すなどしていた。
そに対して2010年、美術の教師から大きな紙に描くことを勧
められ、縦1.6m×横10m のロール紙に絵を描き始める。それ
から7年が経ち、その絵が完成する少し前から本作の撮影は
開始されている。そしてスイスの美術館での作品の展示や、
シンガポールの画家を訪ねる話などが綴られる。
監督は、2004年に独立系メディアOurPlanet-TVで『ぼくらの
学校なくなるの?〜立ち退き問題に揺れる朝鮮学校〜』とい
う作品などを取材・制作している近藤剛。1973年生まれで、
一貫してマイノリティの立場に立った作品を発表している人
のようだ。
という監督の作品だが、監督自身はアート中心の作品にする
つもりはなかったそうで、その意味では確かに古久保さん自
身の考え方や生き方などが丁寧に描かれているとは言える。
しかし古久保さんは画家であり、彼自身を表現するのに絵画
が大きな部分を占めていることに変わりはない。
そこでその絵画の魅力が充分に伝わっているかというと、正
直に言って僕には物足りなかった。実際に試写会場では何点
かの実物を観させて貰ったが、その超細密画とも呼べる細か
さには圧倒された。それが縦1.6m×横10m の全面に繰り広げ
られているとすると、それは驚異的なものだ。
しかし映画ではそれが見えてこない。ここは例えば全体を写
している映像からカメラがどんどん寄って行って細密な部分
に至るとか、その逆でもいいが、何しろこの驚異的な絵の全
貌は示して欲しかった。それはもちろん外連ではあるが、古
久保さん自身を表現する上で欲しかったものだ。
また絵の題材はインターネットなどで見つけているとのこと
だが、その辺の繋がりについても知りたかった。その一方で
シンガポールのシーンでは、建物に興味があるはずの彼が背
景に写っている「マリーナ・ベイ・サンズ」に全く関心を示
さない。その理由も知りたかった。
これらには彼なりの意見もあったはずで、そういった点が彼
自身を理解する上でもっといろいろあっても良かったのでは
ないかと考える。もちろん本作でも彼の信念などは見えてく
るが、彼が監督に心を開いているのなら、もっと深く彼を知
りたいとも思えたものだ。
苦言が多くなってしまったが、興味を惹かれる題材だけに、
もっといろいろなことが知りたくなった。
公開は2019年早春、東京はポレポレ東中野にてロードショウ
となる。

この週は他に
『トラさん 僕が猫になったワケ』
(2014年に『ソフテン!』という作品の映画化もある板羽皆
の原作コミックスを、2008年1月紹介『死神の精度』などの
筧昌也監督が「Kis-My-Ft2」の北山宏光を主演に迎えて映画
化。猫漫画がヒットしたものの、連載の打ち切りでやる気を
失くした漫画家が不慮の事故で命を落とす。しかし次の命を
決める関所で自分自身を見つめ直す機会を与えられた漫画家
は家族の許に戻されるが…、それは猫の姿だった。北山がア
イドルとは思えないダメ親父を演じる。共演は多部未華子、
平澤宏々路。他に飯豊まりえ、富山えり子、要潤、バカリズ

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11月18日(日)
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