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On the Production
by 井口健二
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■第31回東京国際映画祭<コンペティション以外>
語になっている。さらに各種の仕掛けも満載で、謎解きも見
事。さすがに娯楽映画大国の香港作品と思わされた。脚本と
監督は『インファナル・アフェア』シリーズの脚本を手掛け
たフェリックス・チョン。上映時間2時間10分の大作だが、
主演2人の日本での人気もあるし、これは是非とも一般公開
して欲しい作品だ。

『ノン・フィクション』“Doubles vies”
書籍編集者と小説家の関係を描いたフランス作品。ベストセ
ラー作家の新作を巡って、物語のモデルにされた人物や不倫
の恋愛関係。さらにはその出版に疑義を感じる編集者などが
入り乱れる。ジュリエット・ビノシュ、ギョーム・カネらの
共演で、監督はオリヴィエ・アサイヤス。電子出版の話や現
代の出版界を取り巻く状況なども描かれるが、全体的に何か
バランスが悪く、印象に残ったのは壮大な痴話げんかという
感触だった。ヴェネチア映画祭のコンペ出品作品とのことだ
が、受賞は逃したようだ。

<アジアの未来部門>
『武術の孤児』“武林孤儿”
1990年代の中国内陸部で、伝統ある武術学校に国語教師とし
てやって来た主人公を巡る物語。武術の鍛錬が最優先の学校
では武術以外の科目は有名無実で、その現実には馴れた主人
公だったが、そこに武術を好まない生徒がいたことから…。
映画祭では国際交流基金特別賞を受賞した作品だが、主人公
は特に学校の歪んだ状況を正そうとするものでもなく、単純
に現状を容認してしまう結論は、僕には納得できなかった。
ブルース・リーやジャッキー・チェン、ジェット・リーらの
名前が登場するのが審査員の好みだったのかな。

『ミス・ペク』“미쓰백”
実の親による我が子の虐待問題を扱った韓国映画。主人公の
女性は自身が母親から虐待を受けた記憶を持ち、そんな女性
が虐待の現場を目撃したことから、身を挺して被害に遭って
いた子供を救済しようとする。しかしそれは犯罪行為に抵触
する事態になって行くが…。そこにそれまで主人公を護って
きた刑事なども絡んで、事態は大事になってしまう。物語は
実話に基づくとされるが、虐待の有無を検証する謎解きなど
実に巧みな展開の作品で、さすがに韓国映画の実力発揮とい
う感じもする作品だった。

『冷たい汗』“عرق سگی”
女子フットサル・イラン代表チームの主将も務める女性が、
マレーシアで行われる決勝大会に出場するため空港に向かう
が、そこで夫が妻の出国を認める書類にサインしていないと
いう事態に直面する。そこから夫のサインを得るための奮闘
が始まるが…。イスラム国家の男尊女卑が克明に描かれた作
品で、このような作品の製作が認められたことにも驚くが。
逆にこれなら映画化しても良いと考える体制側にも慄然とし
た。同様の男尊女卑を描いた作品では、2007年5月紹介『オ
フサイド・ガールズ』も思い出した。

<CROSSCUT ASIA部門>
『音楽とともに生きて』“In the Life of Music”
1968年、1976年、2007年の3つの時代のカンボジアの姿を、
1つの歌で繋いで描いた作品。それぞれの時代がビスタサイ
ズ、スタンダード、ワイド画面+スタンダードのホームヴィ
デオといった具合に描き分けられ、民主カンプチアによる正
しく人類史上最悪と言える残虐な時代を描き切っている。実
はプレス試写の会場からは数人が途中退室したが、それくら
いの残虐さが描かれていた。第27回の映画祭<アジアの未来
部門>で上映された『遺されたフィルム』も思い出すが、こ
れは人類として決して忘れてはいけないものだ。

『BNK48: Girls Don't Cry』
         “บีเอ็นเคโฟร์ตีเอต: เกิร์ลดอนต์คราย”
2017年にタイ・バンコクで結成されたAKB48の姉妹グル
ープ。その日本人を含む第1期生30人へのインタヴューを通

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11月04日(日)
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