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On the Production
by 井口健二
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■教誨師(タリーと私の秘密の時間、バンクシーを盗んだ男、追想、19歳の肖像、詩季織々、マイナス21℃、ディヴァイン・D、祈り)
『バンクシーを盗んだ男』“The Man Who Stole Banksy”
(正体不明のグラフィティアーティストが、2005年と2007年
にヨルダン川西岸地区のパレスチナ側の分離壁に残した作品
について取材したドキュメンタリー。実は分離壁に描かれた
作品の一部がパレスチナ人には不評で、その壁面を切り出し
て持ち去った男がいる。それが本作の題名にもなっているも
のだが、映画ではグラフィティアートをイタリアの絵画修復
師が壁から分離して保存する手法なども紹介され、ストリー
ト芸術の全般に関るような作品にもなっている。ただ本作で
はそのいずれもが少し掘り下げが足りない感じで、全体的に
は物足りない感じもした。というかそれらがどれも僕には興
味深かったもので、それらの個々についてもう少し詳しく知
りたくもなったところだ。でもそれをやったら専門的過ぎて
つまらないのだろうな。まあ本作はヴァラエティ的には面白
いものだった。公開は8月4日より、東京はヒューマントラ
ストシネマ渋谷他で全国順次ロードショウ。)
『追想』“On Chesil Beach”
(2007年12月紹介『つぐない』でオスカー候補になったシア
ーシャ・ローナンが、再び同じ原作者イアン・マキューアン
のブッカー賞最終候補作に挑戦した作品。因に原作者は前作
に続いて本作でも製作総指揮を務めている。1960年代のイギ
リスを舞台に、新婚旅行で海辺のホテルにやって来た若いと
いうより、性に対して幼い男女の行き違いが描かれる。前作
でローナンが演じたのも幼さ故の過ちを犯す少女だったが、
本作でも彼女は幼さ故に陥穽に陥ってしまう。実は原作の発
表が2007年なので、これは前作の少女のその後なのかもしれ
ない。そして映画では過去の経緯などがフラッシュバックで
挿入され、さらにエピローグが描かれるのも前作に似た構成
になっている。共演は2017年12月17日題名紹介『ベロニカと
の記憶』などのビリー・ハウル。監督はテレビ出身で、本作
が映画デビューのドミニク・クック。公開は8月10日より、
東京はTOHOシネマズシャンテ他で全国順次ロードショウ。)
『夏、19歳の肖像』“夏天十九歳的肖像”
(2013年11月紹介『光にふれる』などのチャン・ロンジー監
督が、ミステリー作家・島田荘司の1985年発表同名原作を、
舞台を台湾に移して映画化。交通事故で入院中の若者が病室
から見掛けた隣家の邸宅に住む女性に一目惚れし、望遠鏡を
入手して観察を続けるが…。その眼前でとんでもない事件が
発生する。やがて退院した若者は友人らと女性の周辺を調べ
るが。出演は2017年6月4日題名紹介『レイルロード・タイ
ガー』などのホアン・ズータオ。共演は2013年にドルフ・ラ
ングレン主演のSFアドヴェンチャー“Legendary”に出演
のヤン・ツァイユー。他にジャ・ジャンクー監督のカンヌ映
画祭・脚本賞受賞作『罪の手ざわり』などのリー・モンらが
脇を固めている。映画の発端からはヒッチコックの名作『裏
窓』を想起するが、当然物語は別物。本作では特に青春ドラ
マの味付けが巧みだった。公開は8月25日より、東京はシネ
マート新宿他で全国順次ロードショウ。)
『詩季織々』
(『君の名は。』を手掛けたアニメーション制作会社コスミ
ック・ウェーブ・フィルムが、中国の会社と組んで制作した
「衣食住」を各テーマとする3作品からなるオムニバス。監
督は中国の易小星と日本の竹内良貴、それに企画者でもある
李豪凌。北京、広州、上海を舞台に風景は変わるけれど、普
遍の青春ドラマが展開される。先週ピクサーアニメーション
を観た後で本作を観ると、世界で評価される日本のアニメー
ションの実力が理解できる。見方を変えると実写でもできる
とも思えるが、アニメーションのオブラートが観客の心に沁
みる感性を生み出している。そんなことに改めて気付かせて
くれる作品だった。特に「食」がテーマの最初の作品「陽だ
まりの朝食」は、登場するビーフンが日本の感覚とはちょっ
と違っているのだけれど、逆に印象に残った。他は「小さな
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07月01日(日)
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