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On the Production
by 井口健二
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■ジオストーム、風の色(東の狼、ラッキー、デトロイト、あなたの旅立ち、曇天に笑う)
が、2008年3月紹介『僕の彼女はサイボーグ』以来となる日
本の映画人と組んだ作品。超常現象の1つとされるドッペル
ゲンガーと、イリュージョン・マジックとを組み合わせ、少
しファンタシーの要素も含む物語。
主人公は恋人の母親から彼女の死を伝えられ、そのショック
で部屋に閉じ籠っていた。そして100日目にようやく部屋を
出て訪れたマジシャンの店で、彼自身が100日前に預けたと
いう箱を渡される。しかし彼にはその記憶がなかった。
それでも持ち帰った箱を自室で開いた主人公は、その中に居
なくなった恋人のものだった品々を見つける。それは彼に彼
女との楽しかった日々を思い出させ、その思い出に支えられ
た主人公は、マジシャンの道を目指すようになる。
ところがそこで彼はドッペルゲンガーの話を聞き、2年前に
イリュージョン・マジックの最中に行方不明になった天才マ
ジシャンの容姿が自分にそっくりだったことを知る。そして
その天才マジシャンの恋人も彼の恋人にそっくりだった。
斯くして主人公は、生前の恋人が行きたいと語り、天才マジ
シャンが消えた北海道の海を訪れるが…。
出演は、2016年1月紹介『太陽』などの古川雄輝と、2015年
『人狼ゲーム』などに出演して本作には1万人のオーディシ
ョンから選ばれたという藤井武美。その脇を竹中直人、袴田
吉彦、中田喜子、石井智也、小市慢太郎らが固めている。
2013年10月及び2016年7月に紹介の『グランド・イリュージ
ョン』はイリュージョン・マジックを犯罪に結びつけたもの
だったが、本作ではそれがラヴストーリーに結び付けられて
いる。その辺はジェヨン監督の真骨頂というところかな。
それに本作のような容姿が同じ相手を、本人でないと知りつ
つ愛せるかという問題は、決して綺麗ごとでは済まないもの
だが。本作ではその点も見事に解決している。それはドッペ
ルゲンガーという事象も含めて巧みに描かれている。
この辺は脚本も手掛けた監督本人が「自分史上、最高のラヴ
ストーリー。」と言い切るだけのことはあるものだ。
その他、劇中に登場する様々なマジックも、Mr.マリック
の監修ということで、VFXも絡めて巧みに描かれている。
また鉄道と道路が並行に走るシーンでのやり取りは、恋愛映
画史上でもトップクラスに入るものと言えるだろう。
100日前に箱を預けたのが誰かなど、謎が残る部分もありは
するが、まずは最上級のラヴストーリーと言えそうだ。
公開は1月26日より、東京はTOHOシネマズ日本橋他にて全国
ロードショウとなる。
この週は他に
『東の狼』
(2010年から2年に1度、奈良県で開催されている「なら国
際映画祭」が母体となって製作されたキューバの若手監督に
よる作品。1969年に日本キューバ合作で製作された黒木和雄
監督作品『キューバの恋人』で津川雅彦が演じたのと同じ名
前の初老の男を藤竜也が演じ、漁船を降り奈良の山奥で猟師
になった男が、絶滅したとされる日本狼の姿を追い求める。
製作総指揮を河直美が務めているが、脚本もキューバ側で
用意されたもののようで、多少日本の国情に合わないという
か、首を傾げたくなる展開も含まれている。狼をロマンの象
徴として描きたいのだろうが、僕にとって日本狼という存在
にはそれ以上の意味が出てきてしまうもので、その辺で題材
そのものに違和感が生じてしまった。僕のような思い入れが
なければ、問題ないことだとは思うが…。公開は2月3日よ
り、東京は新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。)
『ラッキー』“Lucky”
(2017年9月に91歳で亡くなった俳優ハリー・ディーン・ス
タントン主演による最後の作品。なお助演ではこの後に長編
1本とTVシリーズ“Twin Peaks”にも出演している。主人
公は田舎町に1人で暮らしている老境の男。そんな男と周囲
の人たちとの交流や諍いが淡々と描写される。脚本は俳優の
アシスタントだったローガン・スパークスが俳優に当て書き
したもので、中で語られるエピソードなども実話のようだ。
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01月14日(日)
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