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On the Production
by 井口健二
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■ZEN FOR NOTHING〜何でもない禅〜、エターナル
あったのだが…。訪れた妻子の住む家で、彼は妻が隣家の男
性と大麻に耽る姿を見てしまう。
その衝撃で街を彷徨った彼は、立ち寄ったラーメン店で1人
の韓国人少女の姿を認める。彼女は若い男女の乗った乗用車
で立ち去るが、やがて街をふらつきながら歩く少女を見つけ
た彼はその事情を知り、彼女を助けようと行動を開始する。
しかしそれはある事実を彼に突き付けることになる。
脚本と監督は、2008年4月紹介『シークレット・サンシャイ
ン』などのイ・チャンドン監督や、2017年7月2日題名紹介
『わたしたち』などのユン・ガウン監督らが主宰する大学院
プロジェクトで学んだ女流のイ・ジュヨン。女性の柔らかい
感性が、既存のテーマに新しい風を送り込んでいる。
実際何を書いてもネタバレになってしまう作品で、実はこう
書いただけで勘の鋭い人には結末が読めてしまうかもしれな
いのだが。そこにこの監督(脚本)はもう1歩踏み込んだ別
の要素を展開してみせる。それはすでに手垢が付いているか
もしれないこのテーマを新たなものにしている。
従来のこのテーマの作品では殆んどが男性の主人公で、本作
でもそこは同じなのだが、その展開に女性の目が新たな要素
を付け加えている。それが恐らく今までの作品ではなかった
もので、その点だけでも本作は認められるべきものだと言え
る。
それにしても、後半の展開では監督の生真面目さが現れてい
るようで、実に丁寧にすべての事象に説明を付けてくれる。
しかしそれが煩わしくなく、心に沁みるように撮られている
のも本作の良い点と言えそうだ。
公開は2018年2月より、全国ロードショウとなる。

この週は他に
『悪と仮面のルール』
(英訳本が2013年のWall Street Journal誌で年間ベスト10
ミステリーに選ばれたという芥川賞作家中村文則原作の映画
化。財閥家に生まれ、父親から邪悪になることを強制されな
がらも、心を寄せる少女のため父親を殺した少年が、成長し
て風貌を変え、成長した少女の周囲に呪縛のように絡み付く
悪を倒す。しかしそれは彼自身を悪に走らせることとなる。
出演は玉木宏、新木優子、吉沢亮。他に光石研、柄本明らが
脇を固めている。監督はロサンゼルスの大学で映画の演出を
学んだという中村哲平。物語は如何にも作り物という感じが
良いのだろう。でもテロリストの存在などはもう少し明瞭に
描いて欲しかったかな。公開は2018年1月13日より、東京は
新宿バルト9他で全国ロードショウ。)
『ロング、ロングバケーション』“The Leisure Seeker”
(痴呆症の夫と、見た目は元気だが病で余命幾ばくの妻が、
子供に内緒で夫の運転するキャンピングカーに乗り、若い頃
からの憧れだった観光地を目指すロードムーヴィ。この老夫
妻をドナルド・サザーランドとヘレン・ミレンが演じて、そ
れは最高の夫婦愛の姿を見せてくれる。監督は2016年『歓び
のトスカーナ』などのイタリアの名匠パオロ・ヴィルツィ。
自分の母親が痴呆症なもので、描かれるエピソードには共感
するものも多い。その点ではよく研究された作品だと思う。
しかし結末に関しては何か別の展開は考えられなかったか。
テーマ的に最後がこうなるのは良しとして、そこに至る手順
を何かもっと考えて欲しく感じた。公開は2018年1月より、
東京はTOHOシネマズ日本橋他で全国順次ロードショウ。)
『blank13』
(俳優の斎藤工が「齊藤工」名義で撮った長編監督デビュー
作。13年間失踪していた父親の消息が判明するが、その父親
は余命3カ月だった。そして家族との溝も埋まらぬまま死ん
だ父親の葬儀に母親は来なかった。しかしその場に集まった
人々の語るエピソードが空白の13年を埋めて行く。出演は高
橋一生、松岡茉優、斎藤工。他に神野三鈴、佐藤二朗、リリ
ー・フランキーらが脇を固めている。物語は、放送作家はし
もとこうじによる原作から2017年10月紹介『ゆらり』などの
西条みつとしが脚色。その脚本を齊藤監督が演出した。その
演出はそつなく行われているのかな。でももう少し監督の個

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11月26日(日)
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