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On the Production
by 井口健二
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■ロープ 戦場の生命線、レディ・ガイ、ホペイロの憂鬱
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ロープ 戦場の生命線』“A Perfect Day/El pozo”
1995年、停戦直後のバルカン半島で人道支援に携わる人々の
姿を描いたヒューマンドラマ。僕自身が今年観てきた500本
を超える映画の中で、ベストの1本と思える作品。
映画の開幕は、井戸から遺体を引き上げているNGO隊員の
様子。しかし水膨れした遺体の重さに耐えかねた古いロープ
が途中で切れてしまう。そこで本部に連絡するなどロープの
調達を始める隊員たちだったが…。
外国人には物資を売ろうとしない商店やくすぶり続ける住民
感情など、様々な要因が彼らの行動を阻んで行く。そしてさ
らに彼らの行動の是非を判断する女性査察官もやって来る。
彼女はチームリーダーと特別な関係にもあった。
出演は、2012年7月紹介『セブン・デイズ・イン・ハバナ』
などのベニチオ・デル・トロ、2011年7月紹介『グリーン・
ランタン』などのティム・ロビンス、2017年4月23日題名紹
介『ザ・ダンサー』などのメラニー・ティエリーと、2013年
4月紹介『オブリビオン』などのオルガ・キュリレンコ。
製作と脚本、監督は、スペインのアカデミー賞ゴヤ賞で多数
の受賞に輝くフェルナンド・レオン・デ・アラノア。名匠と
呼ばれる監督が自身のプロダクションで作り上げた作品だ。
巻頭の水場を汚すために投げ込まれた遺体という展開では、
1962年『アラビアのロレンス』でオアシスの泉に投げ込まれ
たラクダの死体を思い出した。そこで何故に人間なんだ…?
という疑問が湧いたが、その直後に「動物は食料になる」と
の台詞があって衝撃を受けた。ここでは人間の価値が家畜以
下なのだ。
そんな衝撃からスタートした作品だが、映画ではティエリー
の演じる新人隊員の目線が正に観客に一致しており、それが
観ていて僕らの理解を深めてくれる感じがした。その点では
極めて優れた作品と言える。
しかもそこに豊かなユーモアも散りばめられたもので、それ
をデル・トロとロビンスが的確且つ絶妙に演じ切っている。
そのユーモアが現実のシビアさを描く上で全くそれを阻害せ
ず、却ってそれを際立たせている点にも感心した。
この他にも自分が今まで夢にも考えなかった事象が次々に描
き出され、それを描き切る勇気にも感動する作品だった。
そして何より素晴らしいのは結末。それはあー言っちゃった
という感じの台詞から始まるのだが、その先に何とも言えな
いエンディングが訪れる。これにはカンヌ映画祭でのスタン
ディングオベーションも頷ける、見事な結末だった。
公開は2018年2月10日より、東京は新宿武蔵野館、渋谷シネ
パレス他で全国ロードショウとなる。
『レディ・ガイ』“The Assignment”
『エイリアン』シリーズの製作者に名を連ねるウォルター・
ヒル監督の2012年『バレット』以来となる最新作。
一時期はハリウッドを代表するアクション映画の人気監督の
1人と言えたヒルだが、僕が彼の作品を観るのは、2000年に
トーマス・リー名義で発表された『スーパーノヴァ』以来と
なる。その前は1997年の『用心棒』リメイク=『ラストマン
・スタンディング』かな。
そんなヒル監督の新作はかなり捻りの利いたアクション作品
だった。
まず登場するのは拘束衣に縛られた女医。違法な手術をした
として告発されている彼女は、それが革新的な研究だったと
主張する一方で復讐のためだったことも認める供述を行う。
そして彼女が逮捕された状況を供述するが、彼女が真犯人と
する殺し屋の存在が不明だった。
しかも違法とされる手術の被害者も見つかっておらず、その
供述も曖昧で、そのため彼女は精神病院に収容されているの
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12月03日(日)
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