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On the Production
by 井口健二
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■第30回東京国際映画祭<コンペティション以外>
らポール・マッカートニーのコンサートに向かう男2人の道
中が描かれ、監督自身が演じる助手席の男が延々とビートル
ズへの思いを語り続ける。そこに2人の男の普段の生活がフ
ラッシュバックされるが、途中に登場する運転者の妻と子の
ことなどが、意味不明のまま残される。最初の絵本の意味も
不明だし、全体に何が言いたいのか判らない作品だった。

『アイスと雨音』
結局上演中止となる舞台劇の出演者たちの行動を、オーディ
ションからワンカットムーヴィ風に描いた作品。画面のサイ
ズが変化して劇中と現実を区別しているようだが、後半には
オーディションに居なかった人物が劇中シーンとして登場す
るなど、全く意味不明の作品だった。因に「アイス」は、映
画祭で付けた英題名ではIce Creamだが、台詞の英語字幕で
はPopsicle。その不統一も気になった。

『Of Love & Law』
ゲイカップルでは日本初の里親の認可を受けた大阪の弁護士
カップルを追ったドキュメンタリー。自らがマイノリティで
ある彼らの許には、「君が代斉唱不起立」や「無戸籍者」な
ど様々な弱者が相談に訪れる。僕はマイノリティの問題には
それなりに関心を持って観て来たつもりだが、それでも衝撃
を受けるいろいろな事件が描かれていた。正に日本の病巣の
縮図と言える作品だ。

 今年の「日本映画スプラッシュ部門」は全9作品で、その
内の5本鑑賞した。この部門では作品賞が選ばれ、受賞した
のは『Of Love & Law』。僕は全作品を観た訳ではないが、
この結果には納得する。

<ワールド・フォーカス部門>
『ライフ・アンド・ナッシング・モア』
               “Life and Nothing More”
フロリダの低所得者層の暮す街を舞台に、服役中の父を待つ
息子と、その母親と幼い妹を巡る物語。ドラッグの陰なども
見えるが、白人居住地区に入った主人公が些細なことから逮
捕されるなど弱者に対して冷たい社会も描かれる。2012年の
東京国際映画祭で上映『ヒア・アンド・ゼア』などのアント
ニオ・メンデス・エスパルサ監督の新作は、サンセバスチャ
ン国際映画祭のコンペティションにも選ばれた。

『アンダーグラウンド』“Pailalim”
2017年6月4日題名紹介『ローサは密告された』のメンドー
サ監督が主宰するワークショップで学び、いきなり第1作で
サンセバスチャン国際映画祭に入選したというダニエル・R
・パラシオ監督の作品。本作も生活苦から悪事に手を染める
庶民の姿が描かれる。元は立派な霊廟が並んでいたが、今は
集合住宅のような墓地の中で暮す墓堀職人たちが描かれる。
文化の違いを感じさせる作品でもある。

『こんなはずじゃなかった!』“喜歡‧你”
1982年生まれで、多くの名監督の作品の編集に携わってきた
デレク・ホイの監督デビュー作。金城武の主演に迎えて、冷
酷なビジネスマンながら驚異の舌を持つ男と、新進女性シェ
フの対決を描く。前半の見事なグルメ談議が後半ではただの
ラヴコメになってしまうのは残念なところ。前半最後のトリ
ュフの薀蓄が主人公に跳ね返ってしまうのは、伏線としては
ちょっといただけない感じがした。

『セクシー・ドゥルガ』“Sexy Durga”
弁護士でもあるナサル・クマール・シャシダラン監督がロッ
テルダム国際映画祭で最高賞を受賞した作品。女神ドゥルガ
のと、女神と同じ名前を持つ女性を襲う恐怖の体験が並行し
て描かれる。主人公は恋人と駆け落ちで鉄道駅に向かうが、
ヒッチハイクした自動車は怪しい男たち集団だった。キング
やカーペンターのようなホラー感覚が、土着の奇祭の映像と
共に描かれる。これも文化の違いを感じさせる作品だ。

『Have a Nice Day』“好极了”
中国アニメーションで初のベルリン映画祭コンペティション
部門に出品されたリウ・ジエン監督の作品。裏組織の運転手
だった青年が、整形手術に失敗した恋人の再手術費を捻出す
るため組織の金を強奪する。しかしそれは直ちに知れ、青年

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11月05日(日)
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